清志郎さん、ありがとうございました。

 忌野清志郎さんの訃報を知ったのは5月3日の新聞、帰省中の妻の実家ででした。そこでは僕たち家族の他に義弟家族も来ていてみんな楽しそうにしていました。そこで僕は「長女の夫」であり「ドレミの父」であり「子供世代では最年長」です。だからそこではなにも話題に出さず、みんなで公園に行ったり買い物に行ったりして過ごしました。幸いなことに(?)PHSの調子が悪く、いつもならちょこちょこ見られるネットにも繋げませんでしたので、ごく普通にみんなと一緒にいることができました。
 翌日は朝テレビをつけると、そのニュースをやっていました。でも義母も妻も(あえて)そのことには触れてきませんでした。僕も何も言わず、そのまま過ごしました。
そして昨日の夕方帰宅し、ブログ友人のみなさんのところに行ってコメントを残したり、SNSにちょっとだけお悔やみを書いたりしましたが、それ以上のことを書くことができないで、あれこれ悩みながら今日この時刻まで来ています。
 頭の中にはたくさんの思いがあり、記憶があり、言葉があるんですが、出口が見つからない、そんな感じです。
 僕がここで清志郎さんの業績をまとめて書いたところで「今さら」でしょうし、思い出話や「清志郎さんの活動と作品は日本のロック史における云々」と書いても、今この瞬間ではどっ白けでしょう(いつの日かちゃんと書きたいとは思いますが)。
 1回目の闘病生活に入るとき清志郎さんは「新しいブルースを憶える」とコメントされていました。2回目のときは「ブルースは続いている」とコメントされていました。果たしてそれは「本物のブルース」でした。僕たちファンにとっても、もちろん清志郎さんご本人とっても。でもそれは、本当の意味で歌わなくてはいけない・歌わずにいられないものでした。清志郎さんは、そのブルースを真正面から受けとめ、見事に歌ったんだと思います。昨年の「完全復活祭」での今も記憶に鮮やかなあの熱唱は、清志郎さんがそのブルースの悪魔に(たとえ結果的に一時的なものであったにせよ)見事に勝利した証拠だと思っています。
 清志郎さんは声を失う可能性がある治療法を選択せず、あえて違う方法でガンと闘ったと伝えられています。もしもそれが今回の結果に繋がってしまったんだとしたらと思うと、完全復活に喝采を送ったファンの一人として、申し訳ないというか、戦くような、そんな気持ちです。音楽のために、ファンのためにそこまでしてくれた清志郎さんに、今ここでどんな言葉をかけたらいいんでしょう。
 「天国はない/ただ空があるだけ」と歌った清志郎さん。でも僕は、本当に月並みですが、今は「ご冥福をお祈りします」しか言葉が出てきません。清志郎さん本当にありがとうございました。