誕生日おめでとうピート

 昨日(5月19日)ですが、ピート・タウンゼントが誕生日を迎えたようです。1945年生まれですから、めでたく「64歳」になったようです。そうか、書いていて気づきましたが、映画版「Tommy」の設定は、そのまんまピートの実際の誕生を題材にしていたんですね。
 昨年の来日以来、すっかり定着したザ・フーの人気。今書店にある「プレイヤー」誌は彼らが表紙で、特集も組まれています。僕はとても嬉しいです。名画「Amazing Journey」のDVDも好評のようだし、「Maximum R&B」DVDも評価が高いようです(こっちはまだ購入していないんだけど、観なくても素晴らしいと断言できます)。まさかここにきてこの日本でこれほど盛り上がるとは。生きていると本当、いいことがありますね。
 ところで、ずっと前から「キース死後のフーやピートの活動」についてなにか文章を書こうとしてボツボツ考えています。一般にキースが亡くなったあと(とくにそこから1982年の『第1回解散』あたりまで)のフー(とピート)の活動は、それ以前に比べて精彩を欠いていたということになっていますが、本当にそうなんでしょうか?今日はそのことについてちょっとだけ。
 キースの死は1978年の秋でした。で、「第1回解散」のツアー最終が1982年の12月。約4年。ザ・フーの歴史ではこの時期のバンドは人間関係も険悪、せっかく参加してもらったケニー・ジョーンズもバンドに馴染めず、ピートも財政・健康・家庭問題を抱えて創作意欲が減退、結果的に2枚のアルバム(「Face Dances」と「It’s Hard」)は出来が悪く、ついに解散。そういうことになっています。でも本当にそうかな?僕は昔からずっと疑問に思っています。
 冷静に考えると、この時期のフー(とピート)の活動は、その前数年間がウソのように活発になっていることがわかります。79年には映画「The Kids Are Alright」公開、同時期にあの「さらば青春の光」公開とサントラ(新曲も含んだ)発売。ケニーをフィーチャーしてのツアー開始(カンボジア難民救済コンサートはこの年の暮れ)。80年にはピートがソロ「Empty Glass」発表。81年には「Face Dances」発表、ツアーもありました。翌年にはピートがソロ「All The Good Cowboys Have Chinese Eyes」、グループとして「It’s Hard」発表。その間にピートの「解散宣言」そしてサヨナラツアー。
 どうです。ものすごく活動しているでしょう。実際にはロジャーとジョンもそれぞれソロ活動をしているので、実はものすごく活発に活動しているんです。確かにいろいろ深刻な問題もあり、現実に解散にまで至ったわけですから、波乱があった時期とは言えますが、よくファンの間で言われるような「意欲の低下」「作品の質の低下」などはなく、むしろパンクやニューウェーブを向こうに回して、全開状態だったと言えるかも知れません。
 なぜ今のように低い評価になっているのか考えると、キャリア全体でのピークである「トミーから四重人格」期と比較されてしまうことと、キースの死という最大の事件による負のインパクト、そしてメンバー自身がこの時期についてネガティブな発言しかしないことなどが原因なのかも知れません。それはそれで無理もないことなんですが、結果的に作品に正当な光が当たらず、ケニーのような優秀でバンドに貢献した才能が低く見られるのは不幸としかいえないと思います。
 僕は「Face Dances」は名作だと思っていますし、ピートのソロ、特に「Chinese Eyes」は傑作だと思っています。少なくとも個人的には「絶対外せない」作品です。オープニングの「Stop Hurting People」の「愛は体裁を克服する/愛は立場など粉砕する/愛は狭い見地を黒く塗りつぶす」という歌詞を、まるで念を押すようにしっかりと語るピートの声は、世間一般の評価とは全く違い、真の力に満ちています。
 これをお読みのザ・フーファンのみなさん、この時期のフーやメンバーの作品、もしよく聴きこんでいなくて、「そんなにいい作品ではない」と思ってらっしゃったら、騙されたと思って一度じっくり聴いてみてください。きっと新たな発見があります。もしうまく発見できたら、ザ・フーを聴くうえで、新たな感動が待っていますよ。
 ピート様、お誕生日おめでとうございます。今年もすでにツアーがあったようですね。益々のご活躍をお祈りいたします。またぜひ我が国にも来てください。待ってますよ。どうぞいつまでもお元気で!

All the Best Cowboys Have Chinese Eyes

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フェイス・ダンシズ+5

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