心を映す名曲

 今日で7月も終わり。この1ヶ月はけっこう忙しかったので、ちょっと感慨があります。まあ、8月も下旬に(日常業務以外に)大仕事があり、その準備もあるからあんまり一区切りではないんですけどね。僕の所属はシフト制で、土日連続で休めないので、お盆の帰省をどうしようか、それがプライベートの悩みです。
 iTunesで曲名の検索をしてみました。「Across The Universe」です。ちょっと前に渡辺香津美のバージョンをCMで聴いたので、そういえば持っていたなあと思って、ちゃんと聴きたくなって探してみたのです。聴いてみたらやっぱり良かったです。インストですがコーラスごとにアレンジを微妙に変えていて、ボーカルものをインストにしたときに起こりやすい「単調さ」を免れています。なにしろ音色も暖かでいい感じです。
 ところで、曲名で検索すると、他にも何曲かヒットしました。ビートルズのものももちろんですが(これがまた、何曲も引っかかるんですよね。青盤とか「Let It Be」とか「Past Masters」とか「Anthology」とか)、他にも何曲かあります。その中で今日は特にデヴィッド・ボウイフィオナ・アップルのものを聴いてみました。どちらもそれぞれのアーチストの持ち味がよく出た優れたカヴァーだと思います。
 で、今日気になったのは、サビの部分です。「Nothing’s gonna change my world」という1行。この部分を聴くと、なんだかそれぞれの思いがよく出ているように思われます。
 ビートルズ、というかジョンが歌うと、なにか達観したような「他の連中がどうあろうとも、僕は僕だよ」という感じ。ビートルズ後期、グループよりも個人の世界を追求し始めたジョンらしい印象です。
 ボウイの場合はなんだかもっと挑戦的であり、逆説的です。このカヴァーが収録されている「Young Americans」のころは、ボウイにとって、目まぐるしく音楽性やキャラクターを変えていた時代です。見た目も音楽性もアルバム・時期ごとに違っていたときの彼が歌うあの1行は、まるで「でも僕の本質は変わらないよ。それがわかるかな?」というような、皮肉っぽくありながらも真面目な表明に聞こえます(もちろん、今の視点からですが)。
 そしてフィオナ、彼女がこれを歌うと他の2人とは全く違うものを感じます。繊細な心と神経(そして悲しい過去)を抱えながら、「なにも私の世界を変えることはできないわ」と歌う彼女から感じるのは、なにか「祈り」のような切実さ。僕は彼女のコンサートを観たとき、想像よりもずっと力強いパフォーマンスに圧倒された記憶がありますので、決して彼女の本質が記号的な「繊細さ」だけではないことも承知していますが、それでもこの1行は、彼女の一番センシティブな部分をよく表現していると思います。
 こうして3曲並べて聴くと、それぞれが自分をちゃんと表現しているなあと感心すると同時に、「Across The Universe」という曲が持つ、一種の「懐の深さ」を感じます。歌う人の心や気持ちを映し出す名曲。こうした曲こそ本当の意味での「スタンダード」なのかも知れませんね。

真実

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