ジョー・ジャクソンのパーカッションに寛ぐ

 大雨とか地震とかいろいろあった数日ですが(被災されたみなさまにお見舞い申し上げます)、南関東はここ数日、不安定な天気ながら気温も上がり、今日は真夏らしい1日でした、というか、今も蒸し暑くてたまりません。エアコン嫌いの妻が、帰宅と同時にリモコン早撃ちするほどでした。僕も仕事帰り、たった5分の徒歩で汗びっしょりでした。
 こう暑いと聴く音楽にも変化が起こります。毎年書いていますが僕は暑いとプログレを聴きたくなる性分で、今年もフロイドやクリムゾン、それにキャメルあたりをよく聴いています。それに加えてラテン。今年はラテン・パーカッション・ジャズ・アンサンブルの「Live At The Montreux Jazz Festival 1980」を買って、気に入ってよく聴いています。パーカッションの響きが心地良いです。いつもいつもこだわるという感じではないですが、打楽器の響きには惹かれます。特に夏場によく耳にする音楽には、そういう意味でいい感じのものが多いですね。僕は夏によくボサ・ノヴァを聴きますが、これも一種独特の「パーカッシヴ」な音楽ですし。
 で、ここ数日よく聴くのが、ジョー・ジャクソンのアルバム「Two Rainy Night :Live In Seattle & Portland」。
 80年代にはあんなに売れていて注目されていたジョー・ジャクソンですが、ここ10数年は、活動さえはっきり把握出来ないような位置にいました。僕はかつて「ポスト・ポリスはジョーだ!」と信じていたくらいのファンだったんですが、いつのまにか活動の情報もちゃんと入ってこなくなり、日本盤も出たりでなかったり(出てもソニー・クラシックだったり)で、なんとなく聴かなくなっていました。もともとポップフィールドでの活動をあまりよく思っていない人でもあったので(インタビューでいつも、ロックに対する嫌悪感を語っていましたね)、このままフェイド・アウトなのかなあと思っていました。
 ところが、しばらく前に入手したライヴアルバム(リリースは2004年だそうです)は、ビックリするほどの充実ぶりで、久しぶりに興奮して聴くことが出来ました。この人のライヴは異常な集中と緊張感で進行するもの(過去のライヴ盤でもそんなのばかり)ですが、今回はそういう部分以上にどことなく「風格」みたいなものが備わってきています。相変わらず「観客となれ合う」ような部分はまったくなく、音楽に集中していますが、以前のような「置いてきぼり」される感じは希薄で、十分ポップスとして楽しめます。アーチストもオーディエンスもお互い「付き合い方」と学んだようですね(笑)。MCは控えめ、ギターなし、新旧取り混ぜた選曲もグッド。明確な曲間ブレイクが少なく、メドレーのように曲が続くのも爽快です。
 そして特筆すべきは、全編で聴けるパーカッションの響き。これが本当に気持ちいい。アルバム冒頭なんてほぼ1分間、ハイハットの刻みしか聞こえてこないです。そしてそれが得も言われぬ気持ちよさと、いい意味での緊張感を高めてくれます。曲が始まってからも、ボーカルやピアノ(これも大活躍、ギターレスなのでなおさらウエイトが高いです)以上に耳につき、音楽全体を引き締め、同時に不思議な安らぎも与えてくれます。もともとそういう部分のあったジョーの音楽ですが、この実況盤は素晴らしいパーカッションのおかげで、名盤になったといえると思います、というか、本当に気持ちいいんですよ。ジョーのボーカルもまったく衰えていないし。ある意味シンプルの極みといえる音楽・演奏ですが、同時に豊かな音楽でもあります。
 蒸し暑い夏の夜、このパーカッションに耳を傾けていると、「物を叩く」という行為がどれほどに美しいことか、そこに感動が隠れているかを思い知ります。ああ、気持ちいい。

Two Rainy Nights: Live in Seattle & Porltand

Two Rainy Nights: Live in Seattle & Porltand

 追記:このアルバムを聴いてから、最近の作品である「Rain」(昨年出たオリジナル・アルバム)も聴いてみました。これも素晴らしかったです。日本ではすっかり地味になってしまったジョーですが(世界的にそうなのかな?)、もしかして今は何回目かの黄金時代なのかもしれません。
Rain (Bonus Dvd)

Rain (Bonus Dvd)