追悼 レス・ポール

 外電経由で、レス・ポール死去のニュースが入ってきました。新聞の報道では、ポール・マッカートニーと一緒に写った写真が掲載されていました。
 今では信じられないですが、あのレスポールモデルのギターは、売れ行き不振で1960年代の大部分の時期、生産されていませんでした(後継としてSGが誕生したという話しは有名ですね)。音楽家としてのレス・ポール氏の人気も低迷したという、これまた今では有名なエピソードがありますが、その後のロックミュージックの発展(巨大化)と、あのギターがその歴史に果たした役割を考えると、本当に「信じがたい」ことであります。今年の初めにギターを購入するときにいろいろ調べたんですが、その時に今さらながら驚いたのが、ヴィンテージのレスポールのとんでもない価格と(一番高いものだとマンション買えますよ)、レスポール関連書籍の豊富さでした。僕も数冊購入して読みましたが、インタビューに登場するギタリストがあのギターについて語るときの熱っぽさは本当に大したものでした。
 このとき僕が購入したレスポール・モデルはギブソン製ではありませんでしたが、実は僕は、本家ギブソンレスポールも1本持っています(評価の低い「デラックス」モデルですが)。やたら重くて取り回しが悪いのであまり弾かなかったんですが、たまにケースから出して肩にかけたときのなんともいえない感触は、確かに「みんなを虜にする」のも頷ける魅力でした。
 僕は今、レス・ポール氏のベストアルバムを聴きながらこれを書いていますが、実際の彼の音楽はまったくヘヴィでもメタリックでもなく、古き良きアメリカンミュージック(スイング期のジャズ)に近いものです。ところがふつうのカントリー風味のジャズとは全く違うところがあって、それが彼のもう一つの業績である「多重録音のパイオニア」たる、不思議な音色とハーモニーです。テープの回転数を上げたような高音によるハーモニーは、もう「オーケストレーション」といってもいいかも知れません。僕はちょっとジョー・ミークの「I Hear The New World」やブライアン・メイの演奏を思い出してしまいました。「フレキシブルなインストルメント」としてのレスポールで次代の天才達を鼓舞した一方で、生演奏では実現不可能な音作りを「機材によって」行うことで後の、それこそビートルズからテクノ、ヒップホップに至る道を指し示したことは、これからもっと評価されていくことでしょう。
 上述の書籍のひとつにはご本人のインタビューが掲載されていました。すっかり好好爺という感じの微笑ましいものでしたが、この人の広げた地図のおかげで、たくさんの才能が素晴らしい旅をすることができました。それはこれからも続いていくことでしょう。お恥ずかしいほどヘタクソですが、レスポールオーナーの一人として、そしてひとりのロックファンとして、謹んで感謝と哀悼の意を表します。

ベスト・オブ・レス・ポール&メリー・フォード 90歳バースディ 記念エディション

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もうひとつ、僕の愛聴盤も。
CHESTER & LESTER

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