スティーヴン・タイラー脱退!?

 なんだか唐突に「スティーヴン・タイラーエアロスミスを脱退」というニュースが入ってきました。スティーヴンからのコメントは確認できませんでしたが、ジョー・ペリーが「彼は辞めた。連絡もとっていない」と発言したという報道は読めました。そしてスティーヴン以外の4人は新たなボーカリストを募集するそうで、解散はせず活動は続けるらしいです。エアロって確かこの夏くらいまでツアーやってませんでしたっけ?ステージでスティーヴンがケガをしたというニュースを読んで「相変わらずだなあ」と思っていたんですが。
 やっぱりファンとしては残念だという気持ちがぬぐえません。長年のファンとしてこのバンドが何回もくぐり抜けてきた「危機」も憶えていますし、ジョーのいない時代のアルバムも聴いていましたので(ジョー・ペリー・プロジェクトまで聴いていましたよ)、本来ならもう少し免疫があってもいいと思うんですが、なんだか力が抜けてしまいます。いろいろなことがありながらもあの5人でがんばってきたのが90年代以後のエアロだったし、それはもうふつうのバンド運営力学では説明できない「絆」のようなものになったんだと勝手に思っていたんですね。それに、最初のジョー脱退のときはまだまだメンバー若かったのでいろんな可能性があったんですが(その可能性の中に「オリジナルメンバーで再びトップに!」というものがあり、それが実現したわけです)、今はメンバーももうみんな大ベテランで還暦前後。そうなるとこれからの可能性も小さく見積もらざるを得ません(少なくとも時間的には)。僕としては(度量が小さいかも知れませんが)またスティーヴンの気が変わって「やっぱり戻るよ」となってくれるのが一番なんですが、さて、どうなんでしょう?
 今聴いているのは「Night In The Ruts」。1979年暮れ発表のアルバム。ファンのみなさんよくご存知のように、このアルバム発表後まもなくジョーが脱退、次いでブラッドも抜け、エアロは「第1回暗黒期」に入ってしまいます。このあと数年はバンドの消息自体が不明になるほどの時期で(少なくとも僕にとっては、です)、バンドのクリエイティヴ・パワーは落ちた状態で制作されたアルバム、ということになっています。でも僕はこのアルバム大好きです、というか、なぜ世評が低いのか理解できないくらいいいアルバムだと思っています。脱退寸前だったジョーのギターもよく鳴っているし、スティーヴンのボーカルもいい感じ、曲調も多彩、メンバーの演奏もかっちりとまとまっています(そのへんが逆にこぢんまりした印象を与えるのかも知れません)。特にこのアルバムはホーンセクション参加の曲やブルースハープを大々的にフューチャーした曲があったり、シャングリラズやヤードバーズのカヴァーがあったりと、彼らのルーツがよくわかるという側面も持っています。前作や前々作のような作り込みがなく、熱気のようなオーラがなくどこかクールなプロダクション・ワークですが、それが帰って楽器演奏のリアルさを引き立たせてもいます。問題を抱えていたときでさえこれだけのものを作れたエアロスミス。今もその力はあると信じています。
 僕はソロのスティーヴンも、新たなエアロスミスもきっと追いかけることになるでしょう。でも、やっぱり今夜は、「間違いであって欲しい、またあの5人揃って演奏してほしい」と思ってしまいます。そういえば僕にとって最後に観たエアロのコンサートは、あの2004年のロック・オデッセイ、ザ・フーのあとに登場したときで、そのときはフーの余韻に浸りたいばかりに、エアロは途中までしか観ずに会場を出てきてしまいました。そのとき観られなかったショーの後半をいつかきっと観られる日が来ることを信じて、もう1回「Night In The Ruts」を聴き返したいと思います。

Night in the Ruts

Night in the Ruts

追記:すみません、アルバムタイトルの綴りを間違えていました。正しくは「Ruts」ですね。直しておきました。「世評は低いけど良いアルバムですよ」なんて書いた文章で肝心のタイトル間違えて、ああ、恥ずかしい。