今年もよろしくお願いします。新年早々「Imagine」に思う

 あっという間に今年も始まり、世間様もいつもの調子に戻りましたね。遅くなりましたが新年おめでとうございます。僕は年末のインフルエンザを引きずっていて、なんとなく体調不良・咳止まらずの状態のままでした。仕事は休んでないですが。
 ところでお正月のBS「世界のドキュメンタリー」で、ビートルズ関連のものがオンエアされましたね。録画だけしてまだ全部観ていないんですが、今日取りあえず最初のものだけ観ましたのでその感想を少し。
 僕が見たものは「世界を変えたイマジン」というもの。タイトルどおりジョン・レノンのあの名曲を題材にしたものです。番組はこの曲の由来と与えた影響を追ったもので、楽曲の「精神」とそれに対する反応を描いていました。だからいわゆる「音楽ファン」が期待するような情報は少なかったです。社会派ドキュメンタリーとしてはなかなか見応えがあるものでした。
 ナレーターや司会者がいなくて、ヨーコも含めたいろいろな立場の人が出てきては曲に対する感想や分析を述べるという形式でしたが、個々の登場人物の言葉にはそれぞれ重みがあると同時に、僕のような長年のファンにはどこか「既視感」があるものだったことも事実です。曲に反発するにせよ賛同・賞賛するにせよ、みな真剣に考えていると同時に、「どこかで聞いたことがある」と感じるところが多かったというのも事実です。つまり「Imagine」という曲は、常に話題の中心にあり、論議されていたということなんでしょうね。面白かったのはバリバリ無神論者の科学者と宗教家(キリスト教と仏教)がともにこの曲を賞賛しているところ。仏教に関してはなんとなくわかりますが、科学者が唯物論的立場から褒めているところは(ファンとしてはなんだか的外れのような気もしますが)理解できますが、キリスト教の立場から「たとえ反宗教的な言葉であっても宗教を話題にすることは宗教的だということです」という言葉はちょっと不思議でした。番組はある種の結論を導くのではなく(この手の番組にはよくあることですが)、様々な立場や意見を並列していきます(でもまあ、批判的なスタンスではなかったですけど)。
 さて、僕自身の意見は?と問われたら、ちょっと答えは抽象的になってしまいます。まず結論からいうと僕はこの曲が好きだしずっと聴き続けています。でもその理由は番組に登場したような「○○の立場を説いているから」というものではありません。この曲はなによりもまず「表現」であり、聴き手にある種の意見を表明しているものではないと思うのです。文字通り「○○であると想像してごらん」という言葉には、受け手である僕たちの想像力を解放してごらんよ、という以外の含蓄はなく、それ故にたくさんの論議を呼び、そしてそれ故に愛されるのだと、感じています。
 この曲の主題がヨーコのコンセプト・アートに由来することは有名ですが(この番組でもそのように紹介されていました)、僕はもうずいぶん前に、東京の草月会館でのヨーコの個展で、実際にそのアートを観たことがあります。言葉の詳細は記憶していませんが、「水面に映る月の光を切り取って箱にしまおう」というような言葉が続いていて、それを読みながら会場を歩いていると、不思議に「気持ちが解放されていく」感覚を味わうことが出来ました。僕はそのときすでに上述の「『Imagine』の主題はヨーコに拠る」ということは知っていたんですが、そうしてヨーコのアートに直に接することで、初めて「想像力を解き放って」というコンセプトを経験し、改めて「Imagine」という芸術に近づけた気持ちになりました。僕にとって「Imagine」は詰まるところ、そういう力を持った、優れた芸術なのです。
 今年もこんな感じでとりとめなく続けていくつもりですが、どうぞよろしくお願いします。

Imagine

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