アビイ・ロードの思い出

 今朝のニュースで、「アビイ・ロードスタジオが売却される」というものがありました。所有しているEMIが経営難のために、というのが理由らしいんですが、なんだか不思議で、そしてちょっと寂しいニュースですね。スタジオの維持費がどれくらいなのかは知らないですが、このスタジオの知名度やこれまでの実績を考えたら、僕などは売却するなら大英博物館の別館くらいにしてほしいと思いますが、そのへんはシビアなビジネスですから難しいんでしょうね。
 ところでこの有名なスタジオ、正確にはスタジオ前の横断歩道ですが、僕は実際に行ったことがあります。しかも2回も。海外旅行なんて近場ばかりでヨーロッパには2回しか行ったことがない僕ですが、その2回ともで、行きました(笑)。1回目はもう20数年も前、大学生のときに友人4人と行った貧乏旅行で。この時は本当に貧乏旅行で、イギリス滞在中もB&Bを泊まり歩き、倹約に倹約を重ねての旅行でした。航空代金を安く上げるために(イギリスが一番寒い)2月下旬に行ったんですが、アビイロードに行ったときも快晴でしたが気温は氷点下近く、そしてものすごい風で凍えるような日でした(ついでに書くと、その日がイギリス滞在初日でした)。地図を頼りに現地まで行ったときの印象は「なんだかちょっと違う」というものでした。
 ここを訪れた人がけっこう同じように感じるらしいですが、あのアルバムと同じアングルで景色を見ると、ちょっと道の感じが違っているのです。本当に最初は「ここじゃないのかな」と思ったほどでした。でも歩道を歩き出したらすぐに、あのスタジオ(写真などで見覚えがありました)があったので「ああ、ここだったか」と確信が持てたのです。もちろん撮りましたよ、写真、あのアングルで(笑)。友人達と順番に、というか、僕が撮ってもらっただけかも(笑)。このとき一緒に行った友人の中にロックファンは僕以外におらず、この数日後に(僕が無理矢理旅程に入れてもらった)リヴァプールでも、他のみんなは困っていました(笑)。
 そして2回目は、今から17年前、新婚旅行でした。ウィーン、ザルツブルグと回って、ロンドンは最終滞在地。妻を連れて、というか僕が「行く」と言えば同行しないわけにいかないわけで(妻はこの時が初めて、そして今のところ唯一のヨーロッパ旅行でした)、とにかく2人で行きました。2回目だったので景色に驚くこともなく、ハネムーンで新妻を伴って「聖地」を再訪できたことに舞い上がっていました。もちろんこのときも写真を撮りました、というか妻に撮らせました(笑)。後年このときのことを妻に訊くと「1人で取り残されるのがいやで「行きたくない」って言えなかった」「あなたがものすごく喜んでたくさんしゃべっていたことしか憶えていない」と答えます(笑)。いやあ申し訳ない。でもビートルズファンだったらみんなそうなりますよね。ちなみに2回とも、写真を撮っているとき道行く近所の人達がみんな「またやってるよ」みたいな笑顔で通り過ぎていたのも記憶しています。たくさんいるんでしょうね僕みたいなファン。そういえばスタジオの門と外壁にはたくさんの落書きがありました。
 上にも書きましたが、ビートルズファンにとってはもちろん「聖地」ですが、音楽ファン全般にとっても重要な場所のはずです(ここで録音をしたクラシックの大家は枚挙に暇がありません)。ここが録音芸術に果たした役割は非常に大きく、20世紀の「大衆音楽が起こした大革命」という視点からも、これ以上はないというほどの重要な「史跡」だと思います。私有財産ですからとやかく言うことはできないのかもしれないですが、本当に理解ある買い手が現れてくれることを願います。いつになるかわからないですが、またいつか彼の地を訪れたときにも、あの横断歩道とあの建物を目にしたいなあと思います。

ABBEY ROAD

ABBEY ROAD