Char最新音源とインタビューに感激

 今出ているギターマガジン3月号は、表紙と巻頭特集がCharでした。ここ数年アルバムの発表がなかったCharですが、このたび新レーベルと新事務所を設立したということで、活動再開に臨んでのインタビュー記事がメインです。で、この特集、かなり力が入ったもので、巻頭からレベルの高いCharのグラビア(後述する「Tradrock」録音風景)があり、そして7ページにも渡るインタビューが掲載されていました。
 上に「活動再開に臨んで」なんて書きましたが、実際はそれだけではなく、現在の活動に至るまでの心境や環境の変化を、それこそアマチュア時代にまで遡っての証言で綴るという、非常に内容の濃いインタビューでした。興味深い発言は多々ありますが、「ここ2年間ぐらいで、本当に自分がやりたいことというのは実は別にない!(笑)ということに気づいた」「ギターを弾けりゃいいんだ、俺はって」という発言を一種の導入部として、自分を見つめ直し、新たな一歩として、自分のルーツであるアーチスト(エリック・クラプトンベンチャーズなど)をCharなりに演奏することにした、ということが語られます(その活動が「Tradrock」プロジェクトです)。
 面白いのは選曲はChar自身ではなく第三者が行ったというところ。普通Charくらいのベテランで、しかもクラプトンだのジェフ・ベックだのを取り上げる場合、他人に何事かを任せることはないと思うんですが、そのあたりが今回の企画の(当事者である)Charにとっての肝があったようです。インタビューでもたびたび語られているように、彼はスタジオ・ミュージシャン出身です。その仕事をやっているときは、発注者の意向に沿った演奏をすることが求められていて、そういうところからキャリアがスタートした彼にとっては、そういう作業には抵抗がなかったとのこと。今回、選曲を他人に任せたというところも、そういう「本当の意味でのルーツ回帰」を意図したものなのかも知れません。インタビュアーはCharご本人と親交があるのか質問や受け答えもスムーズ且つ丁寧なもので、読み応えのあるものになっています。
 そして、その新レーベル(ZICCA.NET。こちらです)ですが、現在上述Tradrockシリーズ第一弾「Eric」が購入可能になっています。早速購入して聴き、観てみました(CDとDVDの2枚組です)。内容は、クラプトンが演奏した6曲をCharがバンド形式(トリオ)で録音したもの(ちょっとネタバレしますと、トラック数は6ですが、あと1曲分入っていますよ。曲名はヒ・ミ・ツ)。「The Politician」のみオリジナルに近い感じである他は、わりと自由に演奏しています。1曲目「Badge」はなんとレゲエ調のリズム。でも違和感はありません、というか「アレンジを変えたからイコール新機軸!」みたいな浅いところでは勝負しておらず、キャリアや実力が自然ににじみ出る形での「そのまんまではないアレンジ」になっています。録音は実にアナログ的な感触、映像も3人しか映っていないのでとてもシンプルですが、実はどちらも非常に凝ったもので、単なる「一発録り・カメラ回しっぱなし」ではありません。カラフル・デコラティブではないという意味ではシンプルですが、単純・単調という意味ではなく、実際はかなり計算されています。そのへんのバランス感覚も、Charが生来持っているもので、インタビューを読みながらだととてもよくわかって興味深いです。
 現在のところ音源はレーベルのサイトでの通販のみのようですが、ファンのみなさん、ぜひ聴いて・観てみてください。ギターマガジンのインタビューも併せて読まれると、よりいっそう理解が深まりますよ、ってまるで販促業者みたいですが(笑)、本気です。年初に流れたテレビCM「大人エレベーター 54歳編」で、中村勘三郎と共に出演し、ゆったりと、でも実に彼らしいたたずまいを見せてくれたCharですが、音楽活動も彼らしく、ベテランらしく、でも今も冒険をし続けていますね。こういう「人生の先輩」がいてくれることは、何ものにも替えがたい幸福だと思います。

Guitar magazine (ギター・マガジン) 2010年 03月号 [雑誌]

Guitar magazine (ギター・マガジン) 2010年 03月号 [雑誌]