懺悔しつつ「マイ・シャローナ」を弾く

 数日前、自宅のポストに大きな封筒が入っていました。郵送物ではなく、マジックの手書きで僕の名前が。どうも僕宛のようです。差出人の名前はなし。開けると1冊の楽譜。付せんがついているページを開いたらそこには「MY SHARONA」の文字が。
 これでこの封筒の謎が解けました。差出人は僕がベースを弾いているオヤジバンドのメンバーでギター担当、僕と同じ会社(で僕より上の地位の)友人でした。たぶん出勤途中に車で僕の家まで寄ってポストに入れたんでしょう。先日の練習で「マイ・シャローナ演りたい」と言い出して、リフだけはアドリブで合わせたんですが、こうして楽譜を渡されたということは「ちゃんと練習しておけ」ということなんだと思います。
 今年に入って再開したオヤジバンドのことは、以前にも書いたと思いますが、2回目の練習を先日行い、想像以上にイケル(もちろん独自基準)ということがわかりました。日頃社会的・家庭的(?)ストレスの多い日々を送っている中年達は、しばし「自分たちだけ」の空間で好きな、思いっきり趣味的な音楽にひたれるのが楽しくて楽しくて、しばらく継続して活動することにしたのです。で、継続して練習しても、それだけでは面白くないという話しになり、今年の夏あたりにライヴをやろうと…(笑)。
 前にも書きましたが、主に僕が下手なことが理由により、あんまり他人様にお聴かせするような演奏はできない僕たちですが、目標無しには何事も続かないし、地元にそういう「オヤジバンドのジョイント」企画をやっているライヴハウスがあるということがわかり、急に話しが盛り上がりだしたのです。ワンマンでは集客その他難しいですが、ジョイントならそのへんの労苦(?)は軽減されますからね。で、演奏曲目はこれまでやってきた馴染みのあるものばかり数曲だったのですが、ギター担当が「これ、やりたい」と提案したのが「My Sharona」だったわけです。
 そんなわけで曲をちゃんと憶えるために、「My Sharona」をiPodに入れ、行き帰り折に触れて聴くようになりました。お恥ずかしい話し、僕はザ・ナックの曲は事実上この曲しか知らず、その「My Sharona」自体そんなに熱心に聴いたわけではありませんでした。で、改めてじっくり聴いてみて思ったんですが、やっぱりこれ、いい曲ですね。最初の方、もっと言っちゃうと最初のリフだけ聴いて「知ったか」していましたが、中盤以降もカッコイイし、後半はかなりハードなギターソロも入ってきて、これはやっぱり名曲でした。この曲が発表されたころはちょうと(ロンドン)パンクの勃興期と重なり、シンプルな楽器構成・曲構成がトレンドだったんですが、そういう時代性を差し引いても、いつの時代にも通用する「シンプルなロック」の魅力に溢れています。ちょっと前にヒットしたジェットの「Are You Gonna Be My Girl」にも通じる魅力でしょう。
 実際に(下手だけど)ベースのパートを弾いてみると、フレーズは難しくないですが、とても気持ちよく弾けて(しつこいですが上手くはないですよ)、もしかするとこれは鑑賞するよりも演奏した方が曲の魅力が理解できるんではないだろうか、やっぱりロックはライヴだぜ!などと盛り上がれます。今までザ・ナックというと「一発屋」というようなイメージばかり持っていた自分が恥ずかしいです(実際にはもうちょっとちゃんとしたイメージは持っていましたが、なにしろちゃんと聴きこんだり研究したわけではなかったので、どちらにせよ大した理解はしていませんでした)。
 つい先日、ボーカルのダグ・フィーガーの訃報が報道されたザ・ナック。僕のような人間が偏見を持って冷遇したために音楽活動に苦労があったんだとしたらと思うと、今頃になってジワジワ悔やまれます。いつも自分の好きなバンドが低い評価をされると「偏見を持たないで聴いてくれ」と思うくせに、自分でも同じ事をしていたんだと思うと辛いです。懺悔というと変ですが、今まで色眼鏡で見てきたことの反省も込めて、この曲、一生懸命練習させていただきます。アルバムもちゃんと聴いてみます。まったく、いくつになっても、どれだけ聴いても終わりがないですね、音楽は。

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