No more tears ’cos you love me,Michael

 ちょうど1年前の今日(6月26日)、「マイケル・ジャクソンが緊急搬送」という速報が流れ、ほどなくしてそれが「死亡」に変わりました。
 あれから1年。その間さまざまな言葉が語られ「This Is It」の公開もありました。なにより僕が驚くのは、そのほとんどが賞賛だということです。今やマイケルといえば「キング・オブ・ポップ」「最高のエンターテイナー」「天才」です。亡くなる前や亡くなった直後からは大違い。僕はこれが素直に嬉しいです。今の評価こそがマイケルに相応しいものだと信じています。
 今日はWowwowで長時間マイケルの特番をやっていました。デビュー30周年コンサートではジャクソン5が登場し、一度も観たことがなかった「ゴースト」は圧倒的な映像とダンス(そして、スティーヴン・キングらしいちょっと悪趣味で無内容なストーリー)、いつチャンネルを合わせてもマイケルの音楽と姿が観られて、実に幸せな午後でした。家族もいるしチャンネルを独占もできないので録画しながらのザッピングだったので後半は断片的にしか観ていないんですが、そこで改めて気づいたのはマイケルの完全主義者ぶり。いつ、どれだけ短い時間の視聴でもマイケルは圧倒的な真剣さで歌い踊り、パフォームしています。それはリハーサル映像の集積である「This Is It」でさえです。振り付けや演出がしっかりしたコンサートはたくさん知っていますが、マイケルのものはちょっととんでもないレベルです。もしかしたらこの完全主義者ぶりと作品のレベルの高さが、彼を気軽に語ることを許さず、生前の(相対的に)低い評価に繋がっていたのかも知れませんね。ふだん観ている・聴いているものと余りに違いましたからね。悲しいですが、亡くなったことで僕たちの側にも、彼の才能や業績を認め受け入れる気持ちが生まれる土壌ができたのかも知れません。
 これを書きながら今「Invincible」を聴いています。2001年、「世界を変えた秋」にリリースされたアルバム。これが図らずも生前最後のアルバムになりました。マイケルの作品の中では話題になりにくいものですが、実際に聴くと実に見事な名作です。バラード系の曲に名曲が多いです。「Butterflies」も「Speechless」も、なぜこんなに「無名」なのか理解できません。あえて言えばマイケルの「完璧を求める気持ち」に、少し気後れしてしまうからかも知れないです。これほどの作品を作りながらもそれらを正面から受けとめてもらえなかったマイケルは、今の世界的な賞賛と哀悼の声を聞いたらどう思ったでしょう?いや、あのマイケルのことですから、きっと喜んでくれたでしょうね。そう信じます。
 「Invincible」には「You Are My life」という曲があります。「見知らぬ人ばかりの世界に一人孤独に耐えてきたけれど、突然出会えた君がすべてを変えてくれた/恐れは消え、僕は生き返った/君は世界そのもの、君は僕の人生そのもの」マイケルにしてはシンプルな演奏をバックに切々と歌われるのは逆境にあっても「君(You)」を讃える言葉です。この歌を、1年目の今夜、僕はマイケルに捧げたいと思います。この言葉こそ、今世界中のファンがマイケルに対して抱いている思いでしょう。今夜ここで、改めてマイケルと同時代に生きられたことに感謝したいと思います。ありがとうマイケル、あなたの姿は、歌声は今も世界中に溢れていますよ。きっとこの先もずっとそうであるように。

Invincible

Invincible