ジョージのテレキャスで「新発見」

 今日、2冊の本(ムックかな)を買いました。1冊は「ザ・ビートルズ・イクイップメント・ストーリーズ」(シンコー・ミュージック刊)、そしてもう1冊は同じくシンコーの「フェンダーテレキャスター・ブック」。前者はつい最近出た新刊、後者は2年ほど前に出たものです。
 要するに楽器の本です。「テレキャス」はそのものズバリ、フェンダーのあのモデルについての解説や使用者インタビュー、名盤紹介などで構成されたもの。類書も多く出ていますが、このシリーズは編集が巧みで情報のまとめかたもうまく読みやすいです。「ビートルズ」はこれまたそのものズバリ、ビートルズの使用楽器を紹介したもの(遺憾ながらドラム関連はほとんどなし)。坂崎幸之助さんへのインタビューなどもあって、単なる楽器スペックや使用時期使用曲を機械的に紹介したものとはちょっと違うようです。こちらもまた同じような内容の本は多いですが、(少なくとも監修者の意図は)類書とは一線を画しているようです。まだちゃんと読んでおらず、写真を眺めながら斜め読みしているので断言は避けますが、けっこう期待できそうです(大きさや重さ厚さも手頃で、ビートルズの資料本がどれもこれも百科事典のようになっている現在、可搬性が高いのは非常に助かります)。
 というわけで、2冊同時に眺めていてふと、ある箇所が目にとまりました。まずは「ビートルズ」のほうの117ページ。前ページから続いて、ジョージがゲット・バック・セッションで弾いたオール・ローズのテレキャスターを紹介しているんですが、そこに次ぎのように書かれています。
 「さすがにローズウッド材のソリッド・ボディでは、テレキャスターといえどもかなりの重量になってしまう為、ボディーはローズウッドの単板材をくり抜き、薄いメイプルの付き板挟んで上下に貼り合わせたホロウ構造となっている。」そしてこの文のすぐあとに註として次のような文がカッコ内に書かれています。「実はジョージが所有したカスタムメイドのオールローズ・テレは「ソリッド/くり抜きがない」ボディーだ、という噂もある。実際に当時の市販品の同ギターの中にもほんの数本のみソリッド材のボディーを持った個体があったことは既に確認されている。しかしジョージのオールローズ・テレがどちらだったのか、その事実は最終的な確認にには至っていない」この文章のあと、このギターは1969年にジョージが客演したデラニー&ボニーのデラニー・ブラムレットに譲られたこと、2003年にオークションに出品され、オリヴィア夫人によって落札され、現在は夫人が管理していということが書かれています(デラニーに譲られたというのは有名なエピソードですね)。
 そして「テレキャスター」のほうにいきます。こちらにはテレキャスターを使用しているミュージシャンとして沖縄在住のデイヴィッド・ラルストンという人のインタビューが掲載されています。1999年にはデラニー・ブラムレットに引き立てられる形でレコードデビューを飾ったという彼が、デラニーの自宅にはあのジョージ・ハリスンテレキャスがあったと思いますが弾きましたかという質問に答えてこう話しています。
 「もちろんさ、最初の2枚のアルバムではレコーディングにも使わせてもらったよ。ジャケットにも映ってる。」
 そして、そのギターの様子を尋ねられての回答は次のようでした。
 「当時はあまり大切にされていなかったなあ。それに重かった(笑)。」
 重かった。重かった!実際に手にした人が「重かった」と答えているではないですか?このデイヴィッド・ラルストンという人はふだんからテレキャス弾きのようで(だからこういうムックでインタビューされているんでしょうね)、こういう人の「重かった」という発言は信頼できます。ふだんテレキャスを持っている人が「重い」と感じる重量。これはもう間違いなく、ジョージの持っていたオールローズ・テレキャスターは「くり抜きのない/ソリッド・ボディ」でしょう。ああ、なんか嬉しい。偶然同じ日に買った本で、ビートルズ関係の謎がひとつ解けたなんて。昨日の日記に書いたように土日は夫婦入れ違いで仕事、しかも娘は発熱とけっこう大変だったんですが、これで報われました、少なくとも僕は(笑)。
 ちなみに「テレキャス」本には我らがポール・マッカートニーの写真も1枚掲載されていました。右利き用のテレキャスのボディ先端部(ストラップピンがついているあたり)を大胆に切り取ってレフティ用に改造(?)したというものすごい見た目のテレキャスを抱えた、サングラスにくわえタバコのポール。いつごろの写真なのかしら?写真のテレキャスにはギズモのプロトタイプと思しきアタッチメントが装着されています。ポール関連でギズモの音というと、「Back To The Egg」あたり(1978年〜79年)かしら?市販品ではなくプロトタイプですから、これはポールがゴドレー&クレームから直接譲られたものでしょうね。僕は初めて見る写真でした。この写真1枚でも大満足できます。
 ビートルズファンの方はよくご存知だと思いますが、ビートルズフェンダーギブソンといったメジャーなギターメーカーってそんなに接点がないんですよね。ジョージのオールローズ・テレキャスターはその意味では憶えやすく「ああ、あれ!」とすぐに思い当たるものです。王道系のギター本(フェンダーとか、ギブソンとか)ではあまり見かけないビートルズですが、数少ない情報がうまく絡まってくれて、ひとつ「発見」できました。ジョージがアップル屋上で弾いていたギターは「重い」と、みなさんそのように覚えておいてくださいね(笑)。

追記:今日(2010年7月15日)、横浜元町の「クレーン・ギターズ」の岩本憲明氏とお話ししたところ、上記のインタビューだけではローズテレのボディについての確証には至らないのではないかということがわかりました。こちらのエントリに詳細をアップしておきます。

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