突然の「再会」

 今までも知っていたし、もちろん好きなアーチスト、自分ではそれなりに聴いてきたつもりの存在に突然「開眼した」ということってありませんか?僕は時々あります。今日のお題はその最新版、ポール・ウェラー
 ジャムは「Sound Effects」あたりからリアルタイムで聴いていましたし、あの解散宣言も発表直後に知ったクチです。スタイル・カウンシルは「Speak Like A Child」からのつきあいで、レスポンド・レーベルものも何枚か持っていたはずです(スタカンはおしゃれで落ち着いた英国盤ファーストよりアメリカ盤の方が好きだった記憶があります。「My Ever Changing Moods」はバンド演奏のバージョンが収録されていました)。ソロになってからもずっと聴いていて、あの「ムーブメント」来日公演は川崎で観ました。その後も毎年のように行われる来日公演にわりとマメに参加し、ある時期までは「大好き」なアーチストの1人でした。
 それが、どういう理由だかわかりませんが、いつの間にか離れてしまいました。本当にいつの間にか。気がついたらもうずうっと、彼のアルバムは購入していませんでした。なぜなんでしょう?思うにその頃(10年くらい前)僕には、ポールの音楽の中の「真面目さ」が少し息苦しく感じられたのかも知れません。そしてそのまま聴く機会を逸してしまって今日まで来たと。実に単純で変な理由ですが、それ以外に考えられないです。当時を思い出しても、ポールの音楽を聴いてもすんなりその中に入り込めないという感想を持ったことを憶えています。僕はわりと「一度好きになったアーチストの音楽は聴き続ける」人間なんですが(そのおかげで家の中が大変なことになっているわけです)こういうケースもあるわけです。そして彼の音楽を聴く機会もだんだん減っていったのです(ジャムやスタカンは聴いていたので、正確には90年代以後のポールの音楽ということになります)。
 それが、突然1週間ほど前から、来ました。「ポール・ウェラー聴きたい」という状態が。棚からすぐに出てきた3枚(「Paul Weller」「Stanley Road」「Live Wood」)を聴き返しました。そしてその感想「すごい。素晴らしい」。
 今頃なにを言ってるか、自分でも呆れますが本心です。どの曲もどのアルバムも、実に新鮮に響き、そしてどれにも感動します。特に「Live Wood」。たぶんこのアルバム、リアルタイムで聴いたときにはほとんど心を動かされることなく棚に入ったのではないかと思いますが、今回聴き返して、その内容の豊かさには驚くばかりです。演奏は熱くしかも的確だし、ポールのボーカルも力強い。ちょっと彼の「愛憎入り交じったヒーロー」である(そうだよね。たびたび批判もしてるしさ)ピート・タウンゼントのようなところも感じられます。
 そして、こんなことは初めてなんですが、彼の歌声や音楽に、ある種の「色気」まで感じます。真面目は真面目でも、音楽にはちゃんと艶があり、全然堅苦しいものではない。僕はこのアルバムが収録されたのと同時期の来日公演を観ているはずなんですが、今聴いているほどの感動はしなかったかも知れません。それほど今、僕はポールの音楽を身近に感じています。なぜなんだ?答えはありません。かつて彼から離れてしまったことの理由も結局は不明なように、今になってこれほど入れ込む理由もまた不明です。今これを書きながら、もちろん「Live Wood」聴いていますが、もうどこをどう聴いても「素晴らしい」としか思えません。本当に不思議ですが正直な気持ちです。
 まさに「再会した」?いや、もしかしたら僕は今やっと彼の音楽と「初めて出会った」のかも知れません。

Live Wood

Live Wood