ザ・フー「Leeds」ボックス買いました

 購入しました。ザ・フー「Live At Leeds 40th Anniversary Ultimate Collectors’ Edition」(長いので以下「ボックス」とします)。重い、実に重くて大きい。中はCD4枚にアナログLP1枚、シングル(「Summertime Blues」)そして分厚いブックレットとポスター(アナログについていたオマケの復刻)。ポスター以外のオマケは復刻されずブックレットに写真が掲載されていました。なんかちょっと残念ですね。せっかくのボックスなんだからそこまでやればよかったのに。箱もLPジャケもブックレットもアナログLPと同じデザインで、1年ほど前に出た「クリムゾン・キングの宮殿ボックス」に近いノリです。CD4枚のうち2枚は従来のリーズ盤で高音質CDになっています。残り2枚が事実上の目玉、リーズ収録の翌日にハルで収録された、ほぼ同内容のライヴとなっています。
 さて、LPや従来盤については今回は話題にしません。音質はともかく内容は既知のもので、それが素晴らしいということはロックファンならばよくご存知でしょう。やっぱり注目は初リリースとなるハル音源です。アマゾンの紹介記事では、メンバーはハル音源をリリースしたいと望んだが、数曲でベースの音に欠落があったため断念したと書いてあります。つまり、メンバーはハル音源の方がいい内容だと思っていたと。傑作の誉れ高いオリジナル「Leeds」よりすごいというハル音源、どれほどのものなんでしょう、で、聴いてみました。
 確かにすごいです。これはもう正直な第一印象。高音質CD(なんていうのか知らない)のせいか楽器の分離もいいしクリア、そして演奏内容もかなりのもの。確かにメンバーが「こっちを出したい」と思ったというのもうなずけるようなものでした。特に演奏のノリ。これはすごいです。僕が「おお!」と感じたのは「Shakin’All Over」の後半。ギターソロの途中ロジャーがアドリブで(たぶん)「Spoonful」を歌い出し、楽器の3人がそれをフォローして演奏を盛り上げていくところです。とてもスリリング。これぞザ・フーのライヴの醍醐味ですね。
 ただ、本当にすべて「Leeds」以上かというと、そのへんはちょっと保留かな?問題のベース欠落ですが、どこがどのようにそうなのかわかりませんでした(まだ数回しか聴いていないので僕がわからなかっただけかも知れません。あるいはハル音源にはない「Magic Buss」などがそうなのかな?)。ノリはすごいけれど、けっこう細部は演奏にほころびが見られます。「Do You Think It’s Alright?」の出だしが失敗だったり、「Summertime Blues」も転調がはっきりせず、「Leeds」のようなスピーディな展開にはなっていません。「My Generation」も少しピートが「弾き過ぎ」という印象で、まとまりを欠いています。
 全体としてみれば申し分のない、そしてロック的なダイナミズムに価値を置いて考えたら「Leeds」よりも上かも知れないハル音源ですが、これを独立してオリジナル作品とするには少し難ありだと感じました。その意味ではやっぱりボーナス音源というところが相応しいものなのかも知れません。ハル音源を聴くことで、僕はかえってフーが「Leeds」になにを求めたかがわかったような気がします。彼らは破天荒なノリやワイルドな演奏ではなく、荒々しくはあってもあくまで「ちゃんとしたもの」を発表しようと意図したんでしょう。ライヴ録音当時の彼らはすでに「Tommy」を出し、次の「Lifehouse」(そして「Who’s Next」)へと進もうとしていたところです。もう「モッズのリーダー」「ギターを壊す大音量バンド」から次の一歩を踏み出していました。そのころの彼らに相応しい姿はやはり「Leeds」だと感じます。
 念を押すようですがハル音源の内容に文句はないです。熱心なファンには聴き比べの楽しみもありますし、なによりもギターの音がとても奇麗に録られていて、それだけでも嬉しいです。今ではビンテージとして評価されているSGスペシャルの、まだ現役バリバリの若い楽器だったころの音が聴ける、しかもあのピートの多彩なトーンで聴けるというのは、それだけでもファンには買いです。これを聴いているとSGスペシャルの音、P-90ピックアップの音の美しさに惚れ惚れします。よく考えたら「Leeds」とハル音源は2日連続のコンサートなんですから、そのレベルの高さには驚きます。きっとこのころのフーは連日こんなだったんだろうなあ。叶わぬ願いですが、この目で観たかったと思います。

Live at Leeds

Live at Leeds

 追記 このボックスを手に入れ、ついに僕は「Leeds」を10セット所有したことになります。ああ、ついに2桁。さすがにこれで打ち止めかな?記念すべき打ち止めには相応しい、ずっしりと重く内容も素晴らしい「箱」ではありました。家族の視線は冷たいですが(笑)。