意外な掘出し物「THE BEST」DVD

 昨日から三連休。風は強いものの天気はまあまあで(明日は荒れるらしいですが)、ノンビリさせていただいています。実は異動がらみで3年振りに昭和の日も土日もシフト出勤がなくなったのでなにも用事を入れずに家族と過ごしています。
 で、のんびりした時間でDVD鑑賞。遠日偶然発見し、わりと安かったので購入したもの。タイトルは「THE BEST」。
 ご存知ですか、これはDVDのタイトルどおりの名前のコンサートの実況版。1990年に日本で行われたもので、メンツはジョン・エントウィッスルジョー・ウォルシュ、ジェフ・スカンク・バクスターサイモン・フィリップス、そしてキース・エマーソンというすごいメンツ(ボーカルはリック・リヴィングストン)。正確には1990年9月26日横浜アリーナ収録のもの(と、画面に出ます)。アマゾンで(たぶん)同内容のCDのレビューを読むとWowwowの開局記念番組としてオンエアされたもののようで、冒頭に「ステレオ」と日本語スーパーがはいることから、オンエア版そのままとも思われます。
メンツを見てもわかりますが、これはいわゆる「スーパーグループもの」ですね。現在も名前の通ったビッグネームばかりですが、たぶん現在よりも軽んじられていたころに実現されたものです。今のほうがこの人達への尊敬の度合いは高いはず(60年代70年代のビッグネームがその業績に相応しい尊敬を受けるようになったのは1990年代に入ってしばらくしてから。リンゴ・スターのオール・スター・バンドだってその本当の凄さはリアルタイムでは理解されていなかったはずです)。
 画質音質について書きますと、「それなり」です。特に良くはない。もっとぶっちゃけますと、画質は昔のアナログ質感そのまま。ハイビジョンだBDだという現在の視点からは辛い。エアチェックしたビデオテープをDVDに焼いた程度のものです。もしかしてマスターから製品化したものではないのかも知れません。
 で、内容。これが実は意外なほど充実していました。メンツから個々のプレイがいいものであることはわかりますが、全体としてもまとまっていて、バンドとしてもいい演奏です。見所はいろいろありますが、自分以外の人がフロントのときの演奏も手抜きがなく、楽しそうなので観ていて盛り上がります。「My Wife」や「Take It To The Street」などでのキースのピアノ、「Fanfare For The Common Man」でのギター2人とキース(ショルダーキーボード)での揃い踏み、「America」でのジョーのスライドプレイ(ヴィンテージのレスポールで!)など、目も耳も楽しめました。キースがアメリカンロックでいいバックを聴かせてくれるのもすごいですが、逆にキースが弾く「トッカータとフーガ」にスカンクがユニゾンバロックフレーズをかぶせていくという「意外な一面」も観られます。「Boris The Spider」の途中では「禿げ山の一夜」が挿入されますが、ムソルグスキーでは先輩格のキースはもちろん、ジョーもスカンクもしっかりアンサンブルを構成していて、かなり綿密なリハーサルをやったんだということ、そしてそれを通じてみんなの意思疎通がうまくいったんだということがわかります。それは演奏中何度もメンバーがアイコンタクトをとりあう場面が観られることからもわかります。
 全体のハイライトは(きっと実際のコンサートもそうであったと思いますが)キースのパート。実に上手いし、ムーグの「タンス」他たくさんのキーボードを駆使しての演奏は「プレイではずっと全盛期」の彼らしいです。クレジットでは「Keith Emerson Solo」となっているピアノソロは後に再結成ELPで録音される「Creole Dance」です。
 全体に明るいムードなのはジョー、スカンク、サイモンのカラーかな?それに馴染みつつ自己主張もできているジョンとキースもさすが。この前年に(ザ・フー再結成ツアーで)共演しているジョンとサイモンのリズムセクションが決まっていて、それにリズム感バッチリのキースのキーボードが絡むので、リズムがダレません。結果的に、このコンサートは単純な顔見世興行以上の内容のものになっていました。
 実はこのコンサート、告知されたときに行こうかどうしようか悩んだ末「どうせ懐メロコンサートだろ?」と思って行くのを止めたものでした(ジョンやキースを観たくて相当悩んだんですが)。特別な評判を聞かなかったのでその後なんとも思わないまま月日が流れたんですが、今回DVDを観たことで、今頃になって後悔しています。実はジョンについては、コンサートという形での3回の来日のうち2回は観ていて(リンゴのオール・スター・バンド、トッド・ラングレンアラン・パーソンズと来たビートルズトリビュート)観ていなかったのはこの「THE BEST」だけ。このDVDを観たことでやっと全部内容を知ることができて嬉しいと同時に「行っておけばよかった!」という気持ちにもなっています。はっきりいってどんな年代のファンにもおすすめはしませんが、メンツの誰かにピンと来た方には、ちょっと観ていただきたい「掘り出しもの」だと思います。