小ネタ ポールがデッカと契約

 今日はビートルズ関連の小ネタ。
 ロイターのニュースで「ポール・マッカートニーがバレエのための音楽を発表する」というものがありました。ニューヨークのバレエ団からの委嘱作品だそうです。これだけなら「ああ、またポールがクラシック作品出すんだね」というところですが、このニュースの肝はそっちではなく「その作品をデッカ・レコードから発表する」というところでした。
 ビートルズファンのみなさんには有名な話しで、中級以上の洋楽ファンならご存知のあの「デッカ・オーディション不合格事件」。無名時代のビートルズがイギリスの大手レコード会社のデッカのオーディションを受けるも見事に不合格。しかもその理由が「ギターバンドは流行遅れ」だったとか伝えられ、ポップス史上に残るミスジャッジとして有名になっちゃったエピソードです。
 デッカのために少し弁護しますと、このときビートルズを落としたのはデッカだけではなく、要するに「片っ端から声をかけ、片っ端から落とされた」というのが真相に近く、「その後EMI傘下のパーロフォンと契約した」というのも正確には「パーロフォンに拾われた」に近い感じだったようです(ジョージ・マーティンの本を読んでいたら、ブライアン・エプスタインとの会話で、パーロフォンがコメディのレコードなどを作っていると聞いたエプスタインが「僕たちは本当に底にいるんだな」とつぶやいたという箇所がありました)。
 ともかく、それから50年近く経った今でもこうしてニュースになってしまうあたり、我らがビートルズの偉大さを示していると同時に、あのエピソードはロック界では「非常にポピュラー」なんだなあと、変な感心をしてしまいました。
 ちなみにこのときの不合格の決定は当時も業界ではそれなりにインパクトがあったらしく、ローリング・ストーンズがデッカと契約する伏線になったといわれています。デッカ自体は60年代を通じて良質なブリティッシュ・ポップをリリースする会社として、現在ではイミディエイトと評価人気を二分する会社といっていい存在で、決して無能集団ではありません(60年代英国ポップスのコンピで良質のものをお探しの若いファンの方、デッカとイミディエイトのものなら間違いなしですよ)。
 そして、この不合格の際にオーディションの責任者であったディック・ロウという人物の息子さんであるリチャード・ロウという人が、あの「マイケル・ジャクソンビートルズ版権買収事件」で非常に重要な役割を果たしているのです(「ノーザン・ソングス 誰がビートルズの林檎をかじったのか」(シンコーミュージック・エンタテイメント刊)に詳細が記されています)。不思議な因果だなあと思います。それだけビートルズの存在が大きく、業界のあらゆるものを(人も含めて)引きつけるものなんですね。
 ところで気になるんですが、今回の契約で当のポールはどんなふうに思って、どんな言葉を口にしたんでしょうね?なんとなく気になります。まさかポール、忘れちゃってたなんてこと、ないよね?

ノーザン・ソングス 誰がビートルズの林檎をかじったのか

ノーザン・ソングス 誰がビートルズの林檎をかじったのか