R.E.M.解散に思う

 台風15号は僕の住んでいる地域も直撃し、日本全国にも甚大な被害をもたらしました。これをお読みのみなさまはご無事だったでしょうか?僕は(ここで詳細はふせますが)職業柄台風などのときはずっと仕事モードでなかなか大変でした。でも僕なんかまだまだ軽いほうですね。連続で台風被害に遭われた西日本のみなさま、東日本大震災被災地で台風に遭われたみなさま、心からお見舞い申し上げます。本当に、僕たちがこころから安心できる日はいつ来るんでしょう?
 ところで今日、目を覚ましてネットを見たら、「R.E.M.解散」というニュースが飛び込んできて驚いてしまいました。R.E.M.などはもう解散も堕落もせず、質の高い活動をずっと続けてくれるものだと思い込んでいたので、とても驚きで、かつ残念です。現在公表されているバンドからの声明を読むにつけ、本当にこのバンドは生真面目なんだなと思います。
 僕はこのバンドの魅力に気づくのが遅く、80年代の後半くらいからちゃんと聴くようになったクチです。僕の主観ですが、ロックにおける「オルタナティヴ」という(いくぶん抽象的な)概念をもっとも良い形で作品として昇華したのは彼らR.E.M.ではなかったかと思っています。パンクにおけるザ・フーグランジにおけるニール・ヤングと同じように、オルタナティヴ分野におけるR.E.M.はその巨大な木が生い茂るための、これ以上はない土壌となったと思います。そしてR.E.M.自身、その巨大な木の太い幹であり、大きな枝であり、一番見事な花でもありました。
 そして僕ら世代のロックファンは忘れがちですが、彼らのようなバンド、彼らのような活動があり得たのは1980年代以後だということ。R.E.M.の素晴らしい活動を支えたのがいわゆる「大人のロック」世代より若い世代だということを考えると、本当に彼らはロックの救世主だったのかもと思います。褒め過ぎではないでしょう。今自宅にある彼らの作品を聴き返しても、そこには良き音楽、良きロックに備わっているべきものがすべてあります。
 今これを書きながら聴いているのは「New Adventures In Hi Fi」。彼らの作品の中では比較的地味な部類に入りますが、これは大傑作。ビッグネームになった彼らが、いくぶんの逡巡を含みつつも作り上げた価値あるアルバムです。スリーヴのモノクロ写真もとても美しく印象的。R.E.M.の全作品のなかで、一番好きなジャケットですが、R.E.M.に限らず、すべてのロックアルバムの中でも大好きなデザインです。荒涼としていながら、そこにロックらしい甘さもある、どこかザ・フーの「Quadrophenia」のジャケットを思わせる名ショットでしょう。
 解散のニュースから時間が経っていない今、思いがまとまっているわけではないですが、やはり残念だと思います。声明に窺える彼らの前向きな姿勢とお互いに対する敬意に少しだけ安堵しつつ、今日は彼らのかげがえのない旅路を偲ぶことにします。

New Adventures in Hi Fi

New Adventures in Hi Fi