新譜評 原田真二「OUR SONG」

 何年ぶりだろう?原田真二の新譜を買いました。先月出た「OUR SONG」。
 いわゆるセルフカヴァー(オーケストラをフィーチャーしたものが主)を中心にしたもので、そういう意味では完全なオリジナル作品というのはちょっと無理かもしれませんが、実際聴いてみるとなかなかいいものでした。長年のファンには馴染みの深い冒頭3曲は、オリジナルのイメージを裏切らない範囲でオケが鳴り、音も良くなったような感触。オリジナルキーで演奏されるところもいいです。
 ちょっと収録理由が不明なポール・マッカートニーのカヴァー(「My Love」でも演奏はけっこういいもの)を挟んで、実は聴いたことがなかった「Doing Wonders」からの「Every Night」に驚愕。こんなにいい曲があったんだ?ファンを自認していたのにお恥ずかしい。この曲もそうですが、オーケストラのアレンジがいいもので、メロディアスな原曲をよく引き立ててくれます。
 新曲は2曲。これは真二のもうひとつの側面であるドメスティックなムードのもの(「心の美酒を酌み交わそう」)と震災復興を題材とした(素晴らしいできばえの)「Our Wish For Recovery」。最初に書いたように僕は真二の新曲をちゃんと聴くのがものすごくひさしぶりだったんですが、違和感のない旋律、作品世界でした。このメッセージが取ってつけたものではないのはファンにはご承知のとおりでしょう。ラストはバックが超豪華で、いろんな意味で楽しい「シャドー・ボクサー」のライヴバージョンで締め。
 プロダクションという意味では統一性がない本作ですが、個々の曲の完成度は高く、なによりもカヴァーされた以前の曲と新曲との間に質的なギャップがあまり感じられなくスムーズに聴き続けられるという意味で、いいアルバムだといえるでしょう。買ってよかったです。そういえばドラマの主題歌であのスピッツが「タイム・トラベル」をカヴァーしたとか。この機会に真二を聴いてくれる人が増えてくれるといいな(そして、廃盤になっている諸作品が再リリースされてくれたらいうことなし)。
 ちなみにこのアルバムを買ったら、「11月に行われるイベントご招待」の応募ハガキをもらえたので出してみました。当選するかな?当選したらほとんど30年ぶりに真二の歌う姿を見られることになります。そっちも楽しみです。

OUR SONG

OUR SONG