これはよかった!ELP「Live At The MAR Y SOL Festival」

 今年のNHK大河「平清盛」なんだかんだいってちょこちょこ「Tarkus」(吉松隆版)が流れていますね。クルマのCMでも流れていて(最近やっと実際に観られました)、2012年になってELPがスポット浴びています。偶然にしてもすごいなあ。
 で、今日のお題はELPなんですが。唐突ですがELPって、リイシュー商売が本当に下手ですよね。ボックス、リマスター、紙ジャケ、未発表ライヴなどひととおりやっているのに、どうも盛り上がった記憶がありません。よくわからないベスト盤が多数出るのは他の70年代ビッグネームでも例があるので置いておきますが。僕には魅力のないリミックスアルバムや、海賊盤のオフィシャル化音源で買ってみたら本当に昔の海賊盤並みなんてものもありました(1セット買っちゃったぜ!)。どうもこのバンド、スタッフに恵まれていないというか、そのへんの機微に疎いというか、どうもピリッとしないです。同時代のプログレ仲間がそれなりにちゃんとしたアイテムをリリースするなか、なんというか「粗製濫造」気味のリイシューは、バンドの評価そのものまで下げてしまっているようで悲しいです(ものすごく余談ですが、このバンド、曲のトラック分けにも無頓着で、「Works Vol.1」収録の「Piano Concerto No.1」は楽章ごとにトラック分けがされていません。一番最初のCD化のときだけ分かれていました。おかげでリマスター後の紙ジャケも持っている僕ですが、最初のCDを処分できません「Karn Evil 9」もトラック分けされていたりそうでなかったりと、アイテムごとにばらつきがあって困ります)。
 で、最近入手したアルバム「Live At The MAR Y SOL Festival」。1972年4月収録のライヴ盤。これは久しぶりによかったです。音質はごく標準ですが、彼らの場合公式に出ていた「Welcome Back」も「Works Live」もなぜか音質は良くなかったので、満足のいくものです。ナッソーコロシアム収録の78年ものライヴでさえもうひとつの音質だったことを考慮すると(ちなみにこのアルバムは演奏のレベルもこのバンドとしては水準です。録音は硬い感じで、カールのドラムは軽いし、グレッグのベースもトレブル成分ばかり耳についてしまいます)、もしかしてELPライヴ盤中一番いいと言えるかも知れません。特にベースは変にキンキンしておらず、グレッグのこだわった音色がかなりのレベルで再現されているようです。
 内容は良かったです。「Trilogy」リリース直前の時期なので演奏も上々。収録曲は「Brain Salad Surgery」を抜いた彼らの代表曲という感じで、「Hoedown」も「Take A Pebble」(「Lucky Man」やピアノのインプロも入ってます)も、「展覧会の絵」も、そして「Tarkus」も入っています。「Tarkus」後半部分などは、「Welcome Back」収録版よりもメリハリの効いたアレンジで、こちらの方が内容的に上かも知れません。「Hoedown」は基本的にその後リリースされたものと同じアレンジですが、よく聴くと細部に違いがあって、この後正式なレコーディング完了までに推敲があったということもわかります。「Lucky Man」から続く「Piano Inprovisation」でははっきりと後の「Tigers In The Spotlight」とわかるリフが登場します(「Welcome Back」でもこれは聴けますが、それよりももっとはっきり「あ、あれだ」とわかります)。アンコールの「Rondo」も20分近くの熱演。カールのドラムソロに合わせて手拍子が起こるなど、楽しい場面もあります。
 聴いていて実感しますが、この時期のELPは本当に上り坂だったんだなあ。演奏はただ「上出来」なだけではなく、熱のこもった様子が伝わってきます。グレッグのボーカルもよく伸びているし。まさしく「旬」という感じです。
 こういうライヴのコンテンツを聴くと、バンドの評価には「ちゃんとしたリイシュー」「ポリシーのあるコンテンツ管理」が必要なんだと思います。今からでもいいので、ELPにもそのへんを理解したスタッフでがんばってほしいです。せっかく大河とCMで「Tarkus」に注目が集まっているわけですから、がんばってほしいですね。
 というわけで、土曜の夜も終わり。明日の「平清盛」では「タルカス」流れるかなあ?

Live at the Mar Y Sol Festival '72

Live at the Mar Y Sol Festival '72