ロジャー来日に向けてウォームアップ

 もうすぐ我らがロジャー・ダルトリーのソロ日本公演です。なんだか盛り上がりに欠けるような気になるのは、あまりメディアでの騒ぎがないせいかな?実際のコンサート内容がよければそれで十分なので、事前の空騒ぎは不要ですが、もうちょっと露出があってもいいのかな?とも思いますが。じゃあ僕が一肌脱ぎましょうなんていうと非常におこがましいですが、ちょっとでも彼の名前があったほうがいいかなと思って。今日のお題はロジャーのアルバム「A Celebration〜The Music Of Pete Townshend」。
 これは1994年にカーネギーホールで収録されたライヴアルバム。サブタイトルのとおり、ピート・タウンゼンドの生誕と音楽を称えるという(個人的にはちょっと不思議な)コンセプトのコンサートの模様を伝えるものです。プロデュースはボブ・エズリン。時期的にはザ・フーの活動休止期にあたり、今から考えると一番フーが「歴史的存在」だったころのものです。内容はというとサブタイトルどおり、全曲ピートの作品で構成されています。バックが超豪華で、マイケル・ケイメン指揮のジュリアード・オーケストラとバンドの混成。ちなみにベースはピノ・パラディーノ、キーボードはラビット、ドラムはサイモン・フィリップスで、ちゃんと「ザ・フー・ファミリー」がいるのがファンには高ポイント(ちなみにバッックボーカルに、ビリー・ニコルズもいます。マニアの方は要チェック。後述するようにこのコンサートにジョンとピートも登場しますので、変則的ですが再結成後のザ・フーのメンバー勢揃いの感があります)。
 実際演奏はいいです。個人的に嬉しいサプライズは、数曲であのチーフタンズが参加していること。アイリッシュアレンジの「Baba O’riley」「After The Fire」は特筆すべき演奏です。そしてなにより特筆すべきはジョン・エントウィッスルとピート本人が登場すること。ジョンは「The Real Me」であのベースを再現してくれ、ピートは「Who Are You」を熱唱してくれます。ピートはアコギを抱えていますがものすごい迫力のストロークで、枯れた感じも衰えた感じもまったくありません。
 主役のロジャーも好調。余裕のある歌いっぷりです。基本的にザ・フーのレパートリーが中心で、例外的にピートのソロ曲「The Sea Refuses No River」を歌っていますが、これが素晴らしい出来映え。これをバンド名義で発表していれば80年代のフー評価も変わったろうになあと思えるほどのものです。ちなみにこのコンサートには映像版もあり(僕はDVDを持っています)、収録曲も多くておすすめですが、そっちを観ると「Baba O’riley」と「After The Fire」ではチーフタンズだけではなくシンニード・オコーナー(今は「シネイド」って表記するんだっけ?)が参加していてロジャーとデュエットしているのを確認できます(CDには彼女の名前がクレジットされておらず、声も確認できません。2日間開催されたコンサートなので、彼女の参加はそのうち1日だけだったのかも知れないですね)。また「Behind The Blue Eyes」にはジョン・エントウィッスルがアコースティック・ベースギターで参加していて、チーフタンズと競演している珍しい場面も観られます。ピートが登場したときに観客はもちろんですがオーケストラのメンバーまでノリがよくなるのも見ていて楽しい。欲を言えば、せっかく同じ会場にいるんだから、ピート、ジョン、ロジャーの競演が見たかったということ。もし実現していれば、ドラムのサイモン・フィリップスもいますから「第1回再結成組」の再現になったのに。
 このアルバム、あんまり話題にならないのでもう入手困難かと思っていたんですが、アマゾンで入手できるようです。僕が持っているのは1枚ものですがアマゾンでは2枚組表記で、収録曲もDVDと同じなので、完全版かも知れません(ただし、DVDサウンドトラックがソースの可能性もありますね。そうなると音質はそれなりかも)。もともとクローズアップされにくいロジャーのソロ作品のなかで、企画モノっぽい印象もあって目立たないアルバムですが、聴き応えのある良作だと思います。どこかで見かけたらぜひ手に取ってみてください。僕は最近これをよく聴きます。日本公演のレパートリーとは違うものでしょうが、気持ちのウォームアップにはもってこいです。というわけで、さあ、あと2週間ほどでいよいよ東京公演だ!

Daltrey Sings Townshend

Daltrey Sings Townshend

 追記:プロデューサーのボブ・エズリンがライナーを書いていますが、そこで「18歳のときマネージメントを引き受けていたバンドがザ・フートロントでのコンサートの前座にでたとき、証明も機材も使わせてもらえず、ステージに上がってプレイすることも許してもらえなかったので仕方なく自前の機材を持ち込み、客席で演奏した。そんな扱いを受けたのに、そのときホールの端っこで観た彼らのコンサートは最高だった。その20数年後、こうして彼らを祝福するコンサートの手伝いができるなんて信じられない。」と述べています。やっぱりザ・フーって大物なんだなあ。