ロジャー・ダルトリー日本公演に行ってきました。

 行ってきました。ロジャー・ダルトリー日本公演。約束(?)どおり東京の2公演と神奈川は全部行きました。仕事はGW直前週できつかったですが、達成できてよかったです。
 今回のコンサートの売りである「Tommy完全再現」よかったです。映画、ミュージカルなど様々なスタイルのある「Tommy」ですが、どの形式であれ楽曲の魅力は変わりません。今回なにより嬉しかったし感動したのは、やはりそれがロジャーによって歌われたというところに尽きます。演奏もほぼオリジナルを踏襲したものなので、ザ・フーのファンにはなじみやすかったです。「Sensation」「I’m Free」「Christmas」「Go To The Mirror」など、ザ・フーでも演奏を聴く機会の少ない佳曲が聴けたのも収穫でした。ラストの「See Me Feel Me」のエンディングは最近のザ・フーのバージョンとは違い、あの「ウッドストック」スタイルだったのも感動ポイントでした。「Tommy」については以上。
 僕にとって、コンサートの本当のハイライトは後半にありました。僕は事前に情報をあまり仕入れなかったので「まあ、フーの代表曲を演奏するんだろうな」程度の認識でしたし、実際そうだったわけですが、その内容が良かったのです。後半はいきなり「I Can See For Miles」「The Kids Are Alright」オリジナルのアレンジを基本としながらも少し自由なムードで演奏されるところがロジャーらしい感じです。かと思えば「Behind The Blue Eyes」の最後ではCSNのようなコーラスアレンジを聴かせてくれたり(ちょっと褒め過ぎかな?)、けっこう多彩でした(この曲もそうでしたが後半かなりの曲でロジャーはアコースティック・ギターを弾きました。けっこう上手)。「Who Are You」もやりましたが、あのシンセのフレーズはなく、ごく自然なロック名曲という感じになっていました。「My Generation」は絶対受けるはずのオリジナル風ではなくブルースバージョンであっさり仕上げ、そのまま「Young Man Blues」に突入するという大技。もちろん大受けでした。
 以前からロジャーというひとは、器用さとか流麗さとは無縁のひとだと思っていました。それは今回コンサートを観て確かに実感できたことですが、それがかえって表現の真剣さ、奥深さに通じているようでした。また、前述と矛盾するようですが、どこかに「細かいことは気にせず、走って行こう」とでもいうような雰囲気もありました。これもまたロジャーの人柄・持ち味なんでしょう。実際今回のコンサートでも歌いだしのキー間違い(24日の「Do You Think It’s Alright」)、ギターソロのはずがロジャーが後半コーラスに入ってしまい、そのまんま最初からやり直し(27日の「I Can See For Miles」つまり今日、この曲は「1.5曲分」演奏したことになるのです)などがありましたが、それでも笑顔を絶やさず、全力で歌いきってくれたのは、彼だからこそだという気がします(オフィシャルの映像作品などで、歌いだしを間違えたテイクを編集もせずに入れてしまうなんて、彼くらいのものでしょう。たくさんあるんだこれが)。
 このコンサートではフーの曲だけではなく、ロジャーのソロ曲も2曲披露されました。「Rocks in the Head」収録の「Days Of Light」と「McVicar」収録の「Without Your Love」。どちらもとても素敵でした。前者はのびのびとした歌声で(改めてこの曲の魅力に気づかされました)、後者(本編ラスト)は切々と。特に「Without Your Love」は演奏前に必ず「みんなは客席にいて、僕たちはステージ上にいる。でも僕は自分たちとみんなを分け隔てて考えたことはないよ。この曲はみんなへの僕の気持ちだ」と話していました。ザ・フーのボーカリストではなく、「ロジャー・ダルトリー」の魅力はこの2曲に集約されていたと思います。この2曲を聴きながら「こういうソロ名義の曲だけを、もっと小さな会場で聴いてみたいなあ」と思ってしまいました。意外かも知れませんが、この2曲が聴けたことが、僕にとっては一番の収穫でした。
 演奏をミクロに見ていけば、ミスもあったしハシリもあったし…となるんですが、そんなことすら楽しみのひとつとして成立してしまう、それを含めて演奏者も観客も幸せになれる、そんな「ベテラン」らしいコンサートでした。ロジャー、幸せな時間をありがとう。また来てくださいね。

McVicar: Original Soundtrack Recording

McVicar: Original Soundtrack Recording

Rocks in the Head

Rocks in the Head

 追記:MCでピートのことについて話していました。僕が聞き取れた範囲では「ピートの耳の疾患が治ったら、ザ・フーとしてまた必ず日本に来るよ」と話していたと思います。今日(27日神奈川県民ホール)では、ラストの「Blue Red And Grey」前にかなり長くジョン・エントウィッスルのことを話していたのが印象的でした。
 追記その2:会場の物販でCDとDVDを売っていましたが、ザ・フーのものばかりでした。せっかくだからロジャーのソロアルバムを売ったらよかったのに。「Days Of Light」は受けていたし、帰り道に「あの曲なに?なにに入っているの?」みたいな会話を耳にしましたので、売ったら絶対みんな買ったと思うけどなあ。
 追記その3:東京2公演、神奈川公演を観た印象を総括すると「PAの調子は今イチながら演奏は端正で真面目、あまりミスをしなかった23日」「2日連続だったので少し疲れ気味だったけれど流れはスムーズだった24日(でも上記のように思いっきりド頭のキーを間違えてやり直すというハプニングあり)」そして「会場の盛り上がりが凄まじく、それに乗せられたか演奏も熱を帯びていた27日」という感じです。特に今日の神奈川は、2階席3階席は空席のようでしたが、1階席のお客さんの熱狂ぶりが半端ではなく、いい感じで盛り上がりました。「See Me Feel Me」では口に含んだ水を吐き出すパフォーマンスもあって会場のボルテージも高まりました。「Young Man Blues」の絶叫ぶりは僕が観た3公演中一番でした。