新譜評ジャック・ホワイト「Blunderbuss」

 ジャック・ホワイトの初ソロアルバム「Blunderbuss」を聴いて感じることは、月並みかも知れませんが、ジャックの才能の大きさとユニークさです。個々の音作りや曲作りは多彩です。ジャックらしいといえばそのとおりですが、ラカンターズやデッド・ウェザーではあまり感じなかったこの多彩さは、やはりホワイト・ストライプス的といえるもので、ジャックにとってWSがいかに大きな存在だったかがわかります。
 音楽はブルース的であり、ガレージ的であり、熱心な音楽ファンほどその要素の多さに気づきますが、それがすべてジャックの(いくぶん病的ですが)独特の美意識で彩色されています。それが非常に心地いいです。要素のひとつひとつを考えると既存の音楽から多くのものを取り入れているにもかかわらず、聴いてすぐに「あ、これは○○が元ネタだ」とわかるものではないところもこのひとの才能の大きさを感じさせます。これほど多彩にしてこれほど一貫しているというのはすごいことだと思います。
 ジャックもすでに業界キャリア10年超。WSはもちろん、それ以外のプロジェクトでもかなりの実績と人気、知名度、評価を得ている彼ですが、この新作を聴いてもまだ僕は「この人がどこに着地するのか」がわかりません。ブルースの大地に大きく根を張った音楽であることははっきり感じられますが、それをそのまんま形にするのではなく、必ず自分のなかで再構築しています。それが予定調和にならないところがすごい、真面目にすごいと思います。そしてこの音楽は「この先どうなっていくかわからない」と感じさせてくれると同時に、素晴らしく楽しめるものになっています。それって本当に素晴らしいと思います。
 こうなるとぜひともライヴを観てみたいと思いますが、この人、今年はフジロックに出るんですよね。僕の行くサマソニじゃなくて(溜息)。

ブランダーバス

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