ローリング・ストーンズ50周年コンサート

 ちょっと前の話題になってしまいますが、ローリング・ストーンズの50周年記念コンサート。Wowwowの中継で観ましたが、よかったですね。記念コンサートなのでどれだけ豪華なセットなんだろうと想像していたら、あまりギミック的な仕掛けがなくて、そのへんにバンドの決意というか意気込みを感じました。演奏もまさにそういう感じで、超豪華なゲストで盛り上がる一方、バンドの演奏はいたってオーソドックス、基本に忠実とでもいうような真剣さで、そういう部分でも僕は感動しました。なんだかこういう記念モノだと悪ノリ的な部分が目立つかなと思っていたんですが、いや実に見事でした。
 以下、印象的なことを記すと、やっぱりミック・テイラーの登場です。「Midnight Rambler」での演奏の素晴らしさは身震いするほど。ビグスビー付きのレスポールを自在に操っての、魔法のようなプレイ。ああやっぱり白人ブルース・ギターはこの人で決まりだ。御容貌こそ「歳を重ねた」という感じでしたが、鋭いプレイはまったくダレもブレもなし。キースもロニーも喜んでいいところを彼に譲って、まさにチームの勝利という内容でした。
 「Going Down」ではゲスト2人、ジョン・メイヤーとゲイリー・クラーク・ジュニアとキース、ロニーの弾き比べ。豪華すぎるゲストだったのであまり言及されませんが、この2人やブラック・キーズなど、若手のゲスト選択のセンスがすごい。過去にも自分たちのオープニング・アクトにプリンス、リヴィング・カラーなどを起用したことがあったストーンズですが、この感覚ってミックかなあ?ものすごい嗅覚、ものすごい的確さ。彼らが年老いていかないのはこういう感覚の鋭さ故かも知れません。
 選曲で嬉しかったのはやっぱり「Dead Flowers」。こんな素敵な曲がメジャーじゃないところがさすがストーンズ。例えばポール・マッカートニーのコンサートなどでは本当に大メジャーな曲しか聴けないわけですが、ストーンズは必ずこういう意外なプレゼントをくれるのが嬉しいです。これで「Let It Bleed」があったら僕はもう何もいうことないくらいです。
 記念コンサートらしく全体に明るいムードだったこの日のステージがシリアスな雰囲気になったのは「Wild Horses」のとき。この曲の前のMCでミックが、前日にコネチカット州で起こった銃乱射事件に対する哀悼のコメントを述べ、曲に臨みました。多くを語らずとも、その曲調、演奏、歌声がストーンズの気持ちを現していました。
 上にも書きましたが、コンサート自体はゲストも含めて豪華で盛り上がり、その意味ではいかにも記念コンサートという趣でしたが、演奏自体はしっかりとしたもので、演出で目眩ましすることなく、ちゃんと観る者に届くようなものでした。ちょっとナニなことを書いちゃいますと、キースががぜんヤル気満々でいい演奏だったのが印象的でした(特に「Who Do You love」、ブラック・キーズがゲストなのに「俺が主役だ!」と言わんばかりのギター・ソロはカッコ良かったです)。やっぱり彼らは要は押さえてくる。外さない。もちろんそれはいつも音楽で。だからいつもみんな、彼らに夢中になるんだなあ、そんな思いがしています。50周年というのは本当にすごい偉業ですが、これからもずっと現役でいてほしいですね。今から60周年が待ち遠しいです。そのときは日本公演もぜひお願いしたいものです。
 最後にひとつ、僕が一番感動したところ。
 すべての演奏が終わり、ステージの挨拶の終盤。いつものとおりサポートメンバーが去ってストーンズのメンバーだけになるところで、ボビー・キーズなどと一緒に去ろうとしたミック・テイラーをメンバーが止めて、彼も含めた5人で最後のあいさつをしたのです(しかもミック・テイラーを中心にした並びで!)。50年間ロックンロールバビロンのパブリックイメージを体現してきた彼らの、一瞬かいま見えた友情。ああ、これだからストーンズのファンは止められない。