ノラ・ジョーンズに転がされてみませんか(笑)

 突然ですがノラ・ジョーンズって「転がし上手」だなあって、いつも思っています。ファンのみなさんそう思いませんか?あ、転がされているのは年長のファンとか業界人とかですね。いわゆる「オヤジ」(笑)。
 まずあの音楽性。ジャズ的意匠の落ち着いた音楽性。歌も曲も水準以上ですが同年輩のアーチストと比較すると驚くほど「昔っぽい」感じ。ブルーノートからデビューというところも琴線に触れてきます。ザ・リトル・ウィリーズなんてまさにそんな感じ。ジャズ、カントリー、モダンフォークなど、「古き良き」アメリカ音楽と一脈通じるその歌声は、同世代の音楽ファンだけではなくもっと年長の音楽ファンにも届きました。僕の周りに限っても、最近のものはあまり聴かないという友人の何人もがノラのことは知っており、褒めていました。そういう人は多かったんじゃないかな?グラミーたくさん獲ったというのも、なんとなく業界人(年長の)受けがよかったためのように思えます(渋松対談で渋谷さんもそんなこと話していましたね)。もちろん僕もノラは好きだし評価しています。けなすようなことではないのはわかっているんですが、そのうえでなんとなく思うんですよ、「上手だなあ」って(笑)。
 別に彼女が自分を偽ったり周りを騙しているという意味ではなく、ほら、いるでしょ、同じ事をやっているのに妙に「年上に評価されやすい」人って。下世話な喩えで恐縮ですが、職場とかでもときどきいる「オヤジに受けのいい」女子っていうか(笑)。オヤジも転がされることを楽しんでいるような節もあるんですよね。彼女は決してただオールドタイミーな音楽だけしかできないひとではないのですが、幅広く奥深い才能が、特に「オヤジ」にアピールするのかと。いや別に「オヤジ」に限ったことじゃないんでしょうが(笑)。でも女性アーチストが全員レディー・ガガみたいになっちゃっても困るので(笑)、彼女のような存在はいろんな意味で「救い」になるんでしょうね。他人事みたいに書いていますが、僕だって大好きだし。
 で、今年出た「Covers」です。恥ずかしながら僕はほとんど未聴だったんですが、冒頭の「Sleepless Nights」でぐっと来ましたね。偶然ですが最近グラム・パーソンズを聴き直しているところだったので嬉しかったです。
 基本的には「僕達がよく知っている」ノラという感じですが、一方でウィルコのカヴァーなどもあり、やっぱり一筋縄ではいかない奥深さを感じます。彼女のアルバムはいつもそうですが、楽器の音もとてもいいです。で、全体の印象としてはやっぱり「転がし上手」だなあと(笑)。最近の活動に不安を覚えていてたファンのみなさんも、このアルバムは安心して聴けるはずです。結局は彼女の懐の深さに、僕たちは魅了されてしまうと。で、「転がされる」わけ(笑)。
 ノラが今後どんな方向に向かうのか、正直僕は読みきれていません。どんな方向もあり得ると思うし、どの方向でもいいものを作れる人だと思います。でもこうしていつも「自分のルーツ」と「未来を見る勇気」を持っている限り、彼女の前途は明るいと思います。シンプルなデザインの「Covers」ジャケットに書かれた偉大なアーチストの名前にも並ぶ日だって、「あり得る」と信じています。そんな彼女に「転がされる」のも、年長音楽ファンの「楽しみ」かも知れませんね(笑)。

カヴァーズ~私のお気に入り

カヴァーズ~私のお気に入り

 くだらない追記:邦題に「私のお気に入り」ってあるんですが。「My Favorite Things」がないって、納得いかない(笑)。