歌声に感動した一夜

 昨日2月4日、ライヴを観て参りました。場所は青山の「月見ル君想フ」というところ。出演は畠山美由紀小池龍平、マレウレウ、朝崎郁恵
 畠山&小池は昨年出たアルバムにちなんでのボサノヴァを中心にした数曲。あ、書き忘れていましたがこの日記敬称略です(笑)。畠山のソロ名義の曲も交えながら、そして軽妙で楽しいトークをはさみながらのステージ(「Let’s Take Another Cup Of Coffee」の「コーヒー」を「Beer」に変えて歌ったり)でした。「Moon River」も歌ってくれました。このお店のステージ後方には(お店の名前にちなんでか)大きな月が投射されていたんですが、その月をバックに歌われたマンシーニの名曲はとても感動的でした。伴奏がギター1本というところもよかったです。
 興味深かったのは途中で太鼓奏者の木津茂理がゲスト参加し共演したこと。畠山の出身地宮城にちなんで斎太郎節を歌ってくれました。ふだん民謡はあまり聴かないので新鮮でした(まったく余談ですが、木津さんがバチを入れていた袋(?)、金襴の仕覆のような感じでとても綺麗でした。マレットも入っているのが見えて「?」と思ったんですが。後述の全員ステージで使っていました)。
 続いての登場はマレウレウ。4人の女性によるアイヌの伝承曲を歌うユニット。そういえばアイヌの音楽ってほとんど聴いたことがありませんでした。ほとんど初めてという感じで聴いたその音楽は、とても不思議で、楽しいものでした。輪唱形式のものが多く、3声が輪唱し、それが伴奏となってひとりが独唱するというものをたくさん聴けました。これを頭で理解しようとしても掴み切れない。これはもう気持ちを音楽に寄り添わせて聴くしかない。未知の音楽や芸術に接したときは必ずそうしていますが、思考ではなく委ねるという感じで聴き入りました。ちゃんと理解できたかどうかは不安ですが、慣れてくるにしたがって一種「音楽に包まれている」感覚を覚えるようになりました。
 こんなことを書くととても堅苦しいもののように思われますが、実際のステージは楽しいものでした。曲間にはちょっとした解説や歌詞の説明などがあったんですが、お話しが楽しい!落ち着いた感じでお話しされていましたが、内容が面白くて(ここで再現できないのが悔しい!なんというか、間がいいんですよ)何回も会場は笑い声に包まれていました。お客さんも一緒に踊りや輪唱に参加したりして、いろいろな経験を積むことができました(このとき覚えた輪唱「モッケウケ・ピッソイケ♪」は妻子に教えて、家で再現しちゃいました。けっこう難しいので、上手くいくととても嬉しいw)。この人達のステージが終わったら、なんかちょっと体温が上がったような感じがしました。
 最後は朝崎郁恵が歌う奄美の歌。アイヌの音楽よりは知っている沖縄音楽ですが、間近で聴く生の歌声は格別でした。昨年喜寿を迎えられたという朝崎は、飄々とした感じで全然お高いところはなかったんですが(そして、ご本人は小柄で上品な女性だったわけですが)、静かに歌い始めるとものすごい存在感。1970年代の始めに東京に来て、自作のテープを業界の人(ご本人の言葉では「問屋さん」)に聴かせたところ「3曲聴いていられない」と言われたというお話しをされていましたが、今ならこの歌、この音楽の価値はちゃんと伝わります。それは時代が変わったためであり、時代が変わったのは朝崎のようなパイオニアが状況を切り拓いていったからにほかなりません。音楽リスナー歴もそろそろ40年近くになる僕ですが、知らず知らずに、こうした人達の作った道を歩いていたんですね。
 ラストはこの日の出演者が再びステージに上がって、全員で「星めぐりの歌」を歌ってくれました。あの「イーハトーヴ交響曲」にも登場したあの宮沢賢治の曲。このところ毎日「イーハトーヴ」を聴いていた僕にとっては、ものすごく嬉しいプレゼントでした。
この日のステージを、僕は一番ステージに近い席に座って鑑賞したんですが、そのためか出演者みなさんの生の歌声を耳にする瞬間がありました(当然マイクを使っているわけですが、間近なのでマイクが拾う音以外に生の声が聴こえたのです)。時代も場所も来歴も、演者の年齢も様々なものでしたが、共通するのは「歌うこと、演奏すること」のリアリティでした。それは常に歌う、演奏する人間の肉体を通じて僕達に届いてきます。生演奏をその場で鑑賞することの醍醐味はこれに尽きるでしょう。なんというか、暖かい感触を覚える一時でした。

Coffee & Music ?Drip for Smile-

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もっといて、ひっそりね。

もっといて、ひっそりね。

あはがり/阿母(あんま)/花ぞめ

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