リンゴ来日直前!

 もうすぐ我らがリンゴ・スター&オールスターバンドの日本公演です。会場やらキャパやら売れ行きやら、いろいろな声が聞こえてきますが、それはもういいや、俯いているヒマはない。僕は東京公演2回とも行きます。世間なんか関係なしに僕は盛り上がります、リンゴ最高!
 いや、真面目な話、この数年リンゴはアルバムもコンスタントに出しているし、内容もいいし、音楽家としては充実しています。ツアーも続いていて、まさに現役最古参ミュージシャンの1人でしょう。僕がこんな文章を書いているのも単なるファン心理ではありません。評価すべき人を評価している、そんな気持ちです。
 で、そんな気持ちに触れてくるような本を発見しました。「リンゴ・スターザ・ビートルズ」(シンコーミュージック・エンタテイメント刊)。これはいいです。来日記念の刊行となっていますが、内容は素晴らしい。リンゴの活動をビートルズ時代から現在まで追ったもので、60年代〜70年代はもちろんですが、一般に評価の低い80年代以後の活動についてもちゃんと触れています。リンゴの80年代というと、熱心なファン以外にはその活動を追うことも簡単ではなかったんですが、この本はかなりのレベルでそれを可能にしてくれています。アルバムのディスコグラフィーが写真入りで掲載されているだけで嬉しいです。
 個人的にこれはすごい!と思ったのは過去20年以上に渡る「オール・スター・バンド」のメンバーの紹介および代表作の解説にかなりのページを割いていること。これ、真面目にすごい。ちょっと変わった切り口の「ロックの歴史」のようになっています。本には「このリストは『ロック名盤ベスト100』と言った企画で選ばれる定番アルバムとは、かなり毛色が違う。(中略)誰もが認める名盤だけではなく、振り返られることが少なかったり、確実に一時代を代表しながらも記憶の彼方に埋もれてしまった作品を、たくさん再発見することと思う。それらをひとつの集合体として眺めれば、オール・スター・バンドがロック史全体を俯瞰する、驚くほど贅沢で壮大な試みであったことが改めて理解できるはずだ」という文章がありますが、そこに掲載されているたくさんのミュージシャン、アルバムを見ていくと、それがちっとも大げさなアオリではないことがわかります。
 偉人も傑作もあり、時代とともに思い出のひとつになった人やアルバムもありますが、それも全部ひっくるめてロックであり、大衆音楽であるといえるでしょう。本当に多彩な顔ぶれ、作品群です。グレッグ・レイクまでいるんだもの。本当にすごいです。これだけの錚々たる楽家たちを(時期は違うとはいえ)ひとつのユニットとして束ねてきたリンゴの存在が大きいということは、言うまでもないでしょう。たくさんあるライヴ音源、僕も全部は持っていませんが、今聴けるものを聴いていても、意外な顔合わせの面々が同じステージに上って、「楽しめる音楽」を奏でている、しかもその質は非常に高い、そういうものです。オール・スター・バンド初来日のときは正直戸惑った僕ですが、今はそう思えます。こんなことができるオーガナイザーはリンゴ・スターしかいないでしょう。明るく楽しく、そして「生粋のロッカー」であるリンゴしか。
 今回、こんな素晴らしい本が出たという事自体が、リンゴの音楽と活動が浸透してきたおかげかも知れません。そうであってほしいな。以前も書いたとおり、リンゴのアルバムはリリースした直後はあんまりシリアスに受け止められず、数年たったらプレミアがついて中古盤屋に飾られているということが多いんですが、今度こそリンゴの偉大さに気づいてもらいたいです。この本は、そのことをとてもわかりやすく紹介してくれた良書だと思います。ムックなのでいつまでも店頭にあるわけでもなさそうなものですので、気になった方はぜひ手にとってみてください。さあ、この本を読んでもうすぐ始まる日本公演に備えるぞ!