吉松隆還暦コンサートを聴いてきました

 昨日(3月20日)初台の東京オペラシティで開催された「吉松隆還暦コンサート」に行って参りました。あ、この日記も「敬称略」ですヨロシク。
 コンサートは3部構成で、第一部は器楽曲、第二部以後はオケ(東京フィルハーモニー交響楽団)が舞台に乗って、サイバーバード協奏曲や「平清盛」サントラ曲などを演奏するというものでした。須川展也がソリストを務める「サイバーバード」(第二部)もよかったですが、個人的には比較的静かな曲が並んだ第一部が印象的でした。吉村七重、長谷川陽子田部京子舘野泉らが入れ替わり立ち代り登場して演奏する様は壮観。演奏は抑制の効いたものでした。田部の実演で「プレイアデス」聴けるんですから文句なし。個人的にはオープニングを飾った(とても静謐な印象の)「夢詠み」での吉村の二十弦箏の音色がよかったです。こういう大ホールで聴く器楽曲は、広い空間を感じさせてくれるので個人的に好きなんですが、吉村の箏は格別でした。
 第二部での舞台転換のとき、指揮者の藤岡幸夫と須川2人のトークがありましたが、これがけっこう面白かったです。吉松隆を「落としつつ称える」という感じで、海外でサックス指導をすると「サイバーバード」の楽譜を持参する生徒が多いという真面目な話から、(昨夜のコンサートでも演奏された)「ドーリアン」の楽譜を(藤岡が)初めてみたときに「『春の祭典』に影響されている」と感じたら作曲家ご本人から「俺は『ハルサイ』じゃなくてキース・エマーソンからの影響だ」と言われたという話題まで、短いながら和やかで、会場も楽しそうでした。
 プログラムのラストはあの「タルカス」再演。作曲家の記念コンサートに編曲ものを持ってくるという異色さに驚きましたが、同時にこの曲の注目度の高さもわかります。CDにもなった初演版、2011年「題名のない音楽会」での再演とも演奏が「うーん」という感じだった東フィルですが、今回はよかったです。細部に改定があったらしい感じでしたが、それが編曲の質を高めたよう。全体的にも慣れてきたという様子で、僕の印象としては破綻のない、いい演奏だったと思います。相変わらず「最初っからピーク」という感じの音量は僕としては辛いですが(第二部の演奏も、その意味で辛かった)、メリハリは初演版よりずっとあって、聴き疲れはしませんでした。ほーらね、何回も演奏すると初演の硬さがなくなってくるでしょ?こういう試みは最初の答案で満点でなくても、見守ることで鍛えられていくんですよ。佐渡裕シエナで演奏した吹奏楽版(CD)もよかったですが、この日の吉松版(改訂版かな)は現在のところ一番の出来だったと思います。
 昨晩は会場にキース・エマーソンもいらっしゃって(!)、上記のトークコーナーで紹介されていました。カーテンコールでは吉松とともにステージに上がって、なんとオケと共演で少しだけピアノも弾いてくれたんですよ。曲は「ハッピーバースデー」(笑)。大きなケーキも登場し、オケから赤いチャンチャンコをプレゼントされて、ラストはちょっとくだけた、でも感動的な祝福の時間でした。ロックファンとしては嬉しいサプライズでした。
 僕の本音を書いてしまうと、このコンサートに行った最大の動機は「タルカス」再演を聴きたいというものでした。それは満足できるものでしたが、それ以上にたくさんの名演奏が聴けたのも大収穫でした。休憩もコミで4時間近いコンサートでしたが、楽しかったです。

タルカス~クラシック meets ロック

タルカス~クラシック meets ロック

Tarkus

Tarkus

追記:休憩時間、客席で見かけたキース・エマーソンが誰かに挨拶していました。はっきりとは確認できなかったんですが、あれは冨田勲だったんじゃないかな?まさに両巨頭の邂逅という感じですね。