今日はジャズで三題噺

 4月になりまして、年度的にあけましておめでとうございます(笑)。今年度初めての更新になります。最近はジミ・ヘンドリックスの「新作」を始め、いい作品が(新旧問わず)けっこう出ていて、音楽ファンとしては(相変わらず業界全体では厳しいというのに)個人的に楽しい日々を送っています。今日はそんななかで、旧譜の再発盤、しかもジャズ系でこのところ気に入ったものがあったので、それをお題にいたします。
 デューク・エリントンの「The Symphonic Ellington」のCDを聴きました。今から50年前、ヨーロッパ遠征中に当地のオーケストラと共演したもの。エリントンのペンになる楽曲がいいのは当然として、これ、ものすごく音がいいです。24ビットリマスターなんですが、ベースは重低音だし弦も管もよく響くし、驚いてしまいました。変に現代的に化粧したものではなく、いかにも昔の録音という感じですが(しかもモノラル)艶と奥行き、そして独特の「ゴリッ」とした感触の音です。「ハイ・ファイなブルーノート」という感じかな(変な表現ですみません)?日本初CD化というこのアルバム、1000円なんだからビックリ。本当にエリントンに外れなしです。

 ずっと昔、中学生のときに買った1枚のアルバム。雑誌のレビューを読んで気になり、大枚はたいて買ったのに全然良さがわからず、それどころか聴いた感じが不気味で不気味で、買ったことを後悔しつつ売ってしまいました。そのアルバムはロン・カーターの「Pastels」。あまり気に入らなかったので却って忘れられず、つい最近廉価盤で再発されたのを見かけて買ってしまいました。家に帰って恐る恐る聴いてみたら…。不気味じゃない。というか、全然悪くない。僕の好みとはちょっと違いますが、気持よく聴ける音楽でした。アルバムの売りであったストリングスのフィーチャーですが、初めて聴いた当時は全然ピンと来ませんでしたが、今聴くととても美しい響きです。まだロックでさえ本の初心者だった当時の僕には早すぎたのかな?ともかく、今度は「買ってよかった」と思えて嬉しいです。こういう再会があるのは、長年音楽を聴いてきたからこその楽しみですね。
パステルズ

パステルズ

 先日CDショップを散策(笑)していて発見したペギー・リーの「Let’s Love」。この1974年録音のアルバムは未聴でしたが以前からタイトルだけは知っていたものでした。理由はタイトルナンバーがポール・マッカトニーの作・アレンジだったから。ペギー・リーご本人に関しては通り一遍の知識とリスニング歴しかないのですが、ポール目当てに購入して聴いてみましたら、よかったです。ジャズシンガーとしての彼女を期待すると少し肩透かしを食らうかな?デイヴ・グルーシンが編曲と事実上のプロデュース(クレジット上はペギーと共同名義)を務めた本作は、とても趣味のいい「1970年代のポップスアルバム」でした。スタイリスティックスのカヴァーなどがあるのも「なるほど」と思わせるような、フィリー・ソウル風のアレンジはとてもおしゃれ。ジャズ的なそれとはちょっと違う、ポップス的なアレンジは僕のような人間にはとても心地よく響きます。リー・リトナー、デイヴィッド・T・ウォーカー、ハーヴィー・メイソンなど、なにげに豪華なメンツも明らかにポップス寄りの人選・演奏。逆にポールが仕切ったタイトルナンバーは少し落ち着いた感じで、これはペギーに対するポールの敬意の表れなんでしょうね(でもどこか不思議な感じがするのはポールらしいセンスです)。全体を俯瞰して鑑賞すると、バックの音とペギーのボーカルが少しズレているような感じがするのも今となってはご愛嬌かも。デイヴ・グルーシンとペギーの共作による「The Heart Is A Lonely Hunter」がとてもよかったです。
 どのアルバムも廉価盤でのリリース(1000円前後)。これはCDが売れない現状での対抗策なのかな?価格が価格なのでジャケなどは簡素なもの、その意味では「ブツとしての付加価値」には乏しいものですが、一番肝心な音、音楽については格別のものでした(デジタル・リマスタリングもされているし)。こういうものが容易に聴けることが音楽ファンの裾野を広げ、長い目で見れば音楽市場の拡大に繋がるのではないかな?僕のような「永遠のジャズ初心者」でも手に取ることができたわけですから。ランチ1回分で手に入る豊かな音楽体験、うららかな春のひととき、久しぶりにジャズに浸るのも楽しいです。
レッツ・ラヴ

レッツ・ラヴ

 ペギー・リーについての追記:高田敬三氏による日本盤ライナーで、タイトルナンバーは1974年1月にレコード・プラントで録音されたとありました。そこに「ウイングスの米国ツアーで丁度、渡米中だったポール・マッカトニーは、妻のリンダとスタジオに駆け付け、タイトル曲を一緒に録音している」という記述がありましたが、この時期にウイングス、アメリカツアーやっていたかなあ?ちょっと疑問です。