「ROCK SHOW」を観る

 観ました。ポール・マッカトニー&ウイングスの映画「ROCK SHOW」。映画館には行けそうもないので、BD(国内盤)を買って。僕くらいの年代のポールファンにとっては懐かしい一品ですね。ずいぶん久しぶりのソフト化だということはもちろんですが、今回はなによりも画質向上がどの程度なのかが興味をひく(心配?)ところ。一足先に観た友人たちはみんな「よかった」と語っていたのですが、さてどうか?
 画質についての結論は「満足!よかった!」でした。40年近く前の撮影だし現在のハイビジョン的な画質を期待するとがっかりするかも知れないですが、全然オッケー。昔の「暗い・青い・赤い」だけ(?)のベタッとした画質からは大きく改善されています。暗いコンサート会場での撮影なので粒子が粗いと感じる部分もありますが、それはかえって味わいになっています。フィルム撮影なので背景がいい感じでボケていて、奥行きも感じられます。若いファンには共感してもらいにくいかな?でも僕は「これだけ改善してもらえたのならオーライ」と思います。カメラ数も現在の基準から考えると少ないですが、逆に一つ一つのカットをじっくり観られますので、メンバーの表情や演奏する様をよく鑑賞出来ます。オープニングの「シャボン玉」もやっと「いい演出だったんだなあ」って思えます(笑)。画質については以上。
 内容は、悪い訳ありません。最高のバンドの最高のパフォーマンスが記録されています。ウイングスはポールがライヴを行うために作ったバンドだと言われてきましたし、実際そうなんですが、この作品に登場するバンドは、そんな結成理由など無意味になってしまうほどの一体感を持っていたことに、今回観ながら改めて気づきました。過去いろいろ言われてきたポール以外のメンバーがボーカルをとる曲も、全体のムードがいいので全然違和感ありません。画質がよくなって気づいたのか僕が鈍かったのかわかりませんが。声をかけあい、アイコンタクトをとりあいながら演奏する姿は、ちゃんとひとつのバンドの風格を持っていました。リンダのことといい、僕は偏見に囚われていたのかも知れません。ジミーとジョーも素晴らしい演奏だと、これまた改めて感じました。その姿が確認できたのも大収穫です(一体過去にはなにを観ていたんだろうというくらい、認識を新たにしました。反省するばかりです)。
 ファンはよくご存知のとおり、ポールは1970年代にアメリカでのツアーをこのとき1回しかやっていません。僕はこのことに強く感じるものがあります。ビートルズ解散から始まった1970年代、ポールを取り巻く環境は決して良くなかった。たくさんの批判を浴びました。そこからスタートしたポールにとって、アメリカでの成功は絶対に成し遂げなければならなかったことだったでしょう。そして、それは「徐々に」ではなかった。何回も何回もイギリスやヨーロッパを巡業したのにアメリカツアーをやらなかったのは、絶対に「アメリカでの成功」を最大限効果的に見せたかったんだと思っています。アメリカ建国200年の年にツアーを行ったということも、一聴すると地味な「Wings At The Speed Of Sound」をリリース直後に行ったということも、僕なりの深読みですがすべてポールの意地のように感じられます。誰にも文句も批判も言わせないぞ、「シリー・ラヴ・ソング」のどこが悪い、逆風を浴びながら歩んだ数年間の思いをすべて吐き出すようにシャウトし演奏するポールの姿には感動する他ありません。
 それにしても、観たかったなあ、ウイングス。この作品で聴けるポールのボーカルはもう凄まじいもので、硬軟自在、鳥肌ものです。僕は1990年以後の来日はすべて足を運んでいますが、それはそれとして、ウイングスでのポールを、この最高の歌声を日本で体験したかったなあ。無理を承知でわがままをいえば、この「ROCK SHOW」のメンバーで。本当にそう思います。リンダ、デニー、ジミーそしてジョーと素晴らしいホーン・セクションの仲間たち、そしてリッケンバッカー4001を操るポールを観たかった聴きたかった。この映像には天才音楽家の意地とバンドのマジック、かけがえのない仲間や家族、そして素晴らしい音楽が詰まっています。僕達ファンの思いと共に。

ロックショウBlu-ray【日本語字幕付き】

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 追記
 鮮明になった映像で確認すると、ジミーのSGとデニーのダブルネックがピカピカで最高にカッコイイ!って思っちゃいました。特にジミーは表情も演奏も音色もセクシー。若くして亡くなったのが本当に惜しまれます。ところでデニーのダブルネック、ものすごく手の込んだデザインでインレイなんて超豪華なんですが、これどこのメーカーなんでしょうね(ギブソンかしら?ヘッドのロゴが装飾過多でよく確認できなかった)?
 僕が購入したBDは国内版ですが、パッケージ一体型ブックレットの巻頭に「This remastered release is dedicated to LINDA and JIMMY」とありました。何も言うことはありません。僕も同じ気持です。
 最後に間抜けな指摘。ライナーの「Jet」曲解説でジェットについて「ポールが所有していた子馬の名前」と書いてありましたが、子馬だっけ?僕の記憶ではマーサともども「犬」だったと思うんですが…。