映画評「劇場版銀魂完結篇 万事屋よ永遠なれ」

 ポール来るの来ないの?なんて思いながら悶々としているうちに、気づいたらリンゴの誕生日まで来てしまいました。あ、リンゴ、誕生日おめでとうございます。
 で、今日はガラリと趣向を変えて映画の話。しかもアニメ。「劇場版銀魂完結編 万事屋よ永遠なれ」です(笑)。実は大好きなんですよ「銀魂」。原作はほどほどしか知らないんですが、アニメの方でハマりましてね(最近ですが)、「金魂編」や「かぶき町四天王篇」はDVD買ったほど気に入っています。で、その映画、しかも「完結編」と来た。「どうせ『終わる終わる詐欺』だろ?」と思いながらも気になります。ものすごくたくさんの伏線というか「語り終えていないエピソード」があるこの作品にどのようなケリがつくのか(そんなことが可能なのか?)、なんて思いながら劇場に足を運びました。さてさて、どうだったか?
 ※ 以下、できるだけネタバレしないよう心がけて書きますが、「ポロリ」もあるかも知れません、ご注意ください(笑)。


 映画は冒頭から「銀魂ワールド全開」でスタートします。「え、このエピソードにこんなに時間とるの?」と思うほど長めの導入ですが、本編との対比(本編、特に後半は非常にスピーディ)で、ほどよい「トホホ」感が楽しめます。で、公式予告編にもあるとおり、その後銀時は未来の江戸にタイムスリップし、荒廃した世界とその理由を目の当たりにし、それを防ぐために…、というストーリー。「銀魂」らしいマヌケで下品なギャグ(褒めてます)を散りばめつつ、この作品の長編にふさわしいシリアスな筋が進行します。ただし重要なところは要所要所で登場人物が説明してしまうので、観客があれこれ考えるという謎解き要素は希薄です。
 予告編からも予想がつくとおり、主人公たちの時間移動が大筋になりますのでそれなりに凝ったSF的プロットなんですが、これまた「銀魂」特有の「設定のユルさ」というか「詰め切ってない」ところがあり(褒めてます)、冷静に思い返すと「あれ?」と思うところも多いです。SFアニメと考えたら厳しいかも。それを補うのが登場人物たちのお互いを思いやる気持ち(これは「銀魂」の長編すべてに通底するものですね)と終盤の大規模な戦闘。特に戦闘シーンでは主要登場人物全員が参加し、非常に見応えがありました。ネタバレ回避で詳細は書けませんが、ファンはきっと胸が熱くなる「2人組」バトルが見られるし、あのマダオさんまでが勇敢に戦う様は、密かに「マダオさんファン」である僕には感動的でした。他の登場人物もそれぞれ魅力的な登場・活躍ぶりで、ファンとしては大満足です。作画も動きも劇場版に相応しい力のこもったものだしキャストさんの演技も見事でした。そう、この映画の最大の見所は設定だ筋書きだという部分ではなく、「あのかぶき町のみんながスクリーンで大活躍する」という部分だと思います。その意味では本当に面白い、ファンには嬉しい作品でした。
 で、最大の問題である「完結」という部分ですが…。
 微妙ですね。原作やアニメをずっと読み、観てきたファンにとっての「完結」というとやっぱり「天人と地球人の関係はどうなるのか(注:「天人」は「あまんと」と読みます。作品に登場するエイリアンの総称)」「攘夷志士たちの行く末は?」「幕府や江戸の町、ひいては日本の未来は?そこに万事屋はどう絡むのか?」などだと思うんですが、そういう部分にはまったくノータッチです。これは正直肩透かしでした。期待していた攘夷戦争の詳細も描かれていません(バトルシーンは迫力満点でしたが)。真面目に考えれば「全然完結してねーーーー!」(銀さんの声)ってことになっちゃいます。
 ただ、これはある意味予想どおりといえなくもありません。「前科者」ですからねここのスタッフ(笑)。パンフレット掲載のキャスト・スタッフのインタビューを読んでも、あまり「最後だ!」という重大な思いがあるというよりも「完成させたぜ!」という感じですし、銀時役の杉田智和さんもファンの応援があれば続くというようなことを語っています。「大作を作った!自信作だ!次の予定は今のところないけれど、次がなくても悔いはない作品だ!」そういうことなのかも知れません。
 この作品がヒットして(初動の興行成績はよかったらしいです)「やっぱり続くよ」ということになっても「完結するっていったのに!?裏切られた!」というファンはきっといないでしょう。「銀魂」はそういう作品だし、そこまでコミでファンは楽しんでいるし、なによりそのファンが、続くことを望んでいるに違いありませんから。そう考えると、つくづく「愛されている作品」なんだなあ「銀魂」は、って思います。
 追記:僕は個人的に「定春」(万事屋に飼われている巨大な犬型宇宙生物)が大好きなんですが、映画の中でちゃんと万事屋メンバーとして尊重されていたのが嬉しかったです。こうやってご贔屓さんの、大スクリーンでの活躍を楽しめるというのも今回の作品の魅力ですね。一番マニアックなのはクライマックスに登場した「あの4人」(ビートルズじゃないですよw)。ものすごいスピードで展開したので一瞬「??」でしたが、最後に「おおっ!」となっちゃいました(笑)。