まだルーレットは回っている、勝負はついていない!

 今は2月20日、日本時間の22時30分。ソチオリンピックフィギュアスケート女子SPが終わってからもうすぐ18時間。
 本当に信じられない結果になってしまいました。浅田真央選手、「どうした!?」としか言いようのない結果。いろいろ思うところはありますが、それにしたって彼女の演技そのものが精彩を欠いていたことは間違いありません。僕はリアルタイムでテレビ観戦していて、思わず声を上げてしまいました。妻も一緒に観ていたんですが言葉もありませんでした。直前のソトニコワ選手の見事な演技があっただけになおさらです。今日はずっと暗い気分でした。こんな気分の人は日本中に大勢いたと思います。そんな気持ちのまま出勤し、仕事をして、帰宅して、今に至っています。このまま今日のフリーを観ることになるかなあ、と思っていました。ついさっきまで。
 ついさっき、フィギュアスケートの大ファンである友人と電話で話しをしていたとき。僕以上に残念がっていた彼女が気持ちを切り替えるようにこう言ったのです。
 「フリーが終わるまでが遠足よ!まだ終わってないわ!」

 「それは「おうちに帰るまでが遠足」じゃないの?」と返しながら、その言葉に僕の気持ちが反応し始めました。
 まだ終わっていない。
 そうだった。そうだった。よく考えたら試合はまだ終わっていない、というかまだ前半が終わっただけだ。SPではダメだったのがフリーで大逆転という劇的なシーンも何回も観てきたじゃないか。5回終了後に敗北宣言する野球チームがないように、前半終了で試合放棄するサッカーチームがないように、「I Want You」まで聴いて「Abbey Road」の感想を述べるビートルズファンがいないように(?)、フィギュア女子シングルの試合はまだ終わっていないのです。試合が続いているのなら、観客がすべきことはただひとつ。良い結果を祈って声援を送るだけです。
 浅田真央選手だけではなく鈴木明子選手、村上佳菜子選手にもSPにはそれぞれ課題がありました(個人的には鈴木選手の演技は素晴らしかったと思っています。もう少し点が出てもよかったのではないかな)。でもそれは過ぎたことです。フリーにはフリーの風が吹き、選手はみんなその風を受けて跳ぶのです。選手が跳ぶのに僕たちが泣いてどうする?
 僕はちょっと前の日記に浅田選手に対して「メダルの色なんて関係ない。最高の演技をしてくれさえすれば」と書きました。でも今この状況で、僕は逆に欲張りたいです。「最高の演技をして、誰もが目を疑う大逆転をしてほしい」と。僕が知っている音楽の天才たちはみんな、僕のような凡人が引く一線を、ハードルを軽々と超え、僕達の貧しい想像の及ばない高い遠いところへ翔んでいくような人たちばかりでした。そして浅田選手、彼女は間違いなく天才です。ならば彼女もまた、僕達が想像するようなレベルを遥かに越えていくに違いありません。根拠は?と問われれば、正直「ない」としか答えられません。でも僕は今、本当にその瞬間を待ちわびています。それはどの選手の上位に立ったとかメダルは入賞はという話ではなく、僕のなかにある「凡人の領域」を超える瞬間を、ということです。
 僕はどの選手の「敵失」も願いません。すべての選手にベストを尽くしてほしいと思っています。そしてその戦いから、日本人選手の笑顔が届けられるのを信じています。
 浅田、鈴木、村上選手、フリーでの名演技を待っていますよ。五輪の大舞台で日本選手の底力を見せてやりましょう。今がどんな状況であろうと、目指すのは最高の演技、最高の笑顔です。がんばれ我が選手たち、がんばれニッポン!

 2月21日の追記:フリーが終了しました。信じられないノーミス神演技で6位入賞!本当にこの選手はすごい。連続入賞の鈴木選手、初出場で12位の村上選手も、素晴らしい演技でした。僕は心から感動しましたよ。お疲れ様、ニッポン女子。