新年度最初に相応しいかっこよさ「Going Back Home」

 バリバリのオールド・スクール、でも切れ味は最高。そういうアルバムでした、ウィルコ・ジョンソンロジャー・ダルトリーの「Going Back Home」。
 ある意味、「想定内」の音楽、演奏ですが、それが「最高得点」で実現しているところが最大のセールスポイントです。音楽性を決定しているのはウィルコ、そこにロジャーが客演するというスタイル、収録曲は1曲(ボブ・ディランのカヴァー)を除いてはドクター・フィールグッドかウィルコのソロナンバー、リズム・セクションはお馴染みノーマン・ワットロイとディラン・ハウなのでこれは聴く前から予想がついたとおりですが、ロジャーのハマり具合が半端じゃない。びっくりするほどピッタリです。ザ・フーのときよりもリラックスした感じですが、独特の粘っこい発音と抑揚がウィルコの音楽に見事にフィットしていて、見事というほかありません。もちろんウィルコも快調、どっしりしたバンドの演奏に乗って生き生きと演奏しています。ロジャーがいるせいなのか、非常にポップな印象を受けるのも新鮮です。
 ゲストプレーヤーはハーモニカとキーボード、そのキーボードを演奏しているのがあのミック・タルボットだというのも嬉しいサプライズ。ロジャーとミックでは反射的に「モッズ」と連想しますが、そういうテイストもあるかな?さほど「狙った」感じはしません。ちなみにミックのオルガンとピアノもとてもいい演奏。
 ジャケットが実にかっこよくて惚れ込んでしまいますが、ブックレットの写真もとてもいいです。昔のものから最近のものまでいろいろ。そのなかの1枚、最近のウィルコの演奏場面の写真に一緒に写っているのは鮎川誠氏ではないかな?だとしたらこれは昨年の「さよならツアー」のものですね。ちなみにロジャーの写真もたくさんありますが、とても上手にトリミングされていて、フーのメンバーはまったく写っていませんでした。
 このアルバムが現代の音楽界に革命を起こすとか、ロックンロールの復権につながるとか、そういう危険はたぶんないでしょう(笑)。ただここには、実力のあるミュージシャンが、大好きなロックを奏でることの楽しさが溢れています。僕が入手したのは輸入盤のCDですが、レーベルはなんとビックリ、チェスでした。それもまたとても嬉しい要素です。
 上に書いたとおり、新しさや珍しさは希薄ですが、ロックファンには最高のギフトであるこのアルバム。僕は入手以来ずっと聴き続けています。全部馴染みのあるロックンロールなのに、全然飽きません。ちなみにブックレット裏表紙の、現在の2人が並んだ写真も「素敵!」の一言。こりゃ、アナログも欲しくなっちゃいます。

GOING BACK HOME

GOING BACK HOME