4月13日「題名のない音楽会」はすごかった

 一昨日(4月13日)のテレビ朝日題名のない音楽会」はすごかったです。あの大友良英氏をゲストに招いて、ノイズ・ミュージックをテーマに30分という、よく考えたらものすごい内容のものでした。
 大友氏は冒頭でノイズ・ミュージックについて「ジャンルなのか考え方なのかを一言で説明できないところが魅力」と語り、基本的には様々な音源をかけ、それに触発されて話しをするという形で進行させていきました。歴史や意義から説明するのではなく(漠然と時間軸には沿っている感じでしたが)、とにかく多くの音楽を流すというやりかたは、まさに「音そのもの」に語らせるという趣きで、結果的にとても効果的だったと思います。氏が影響を受けたというジミ・ヘンドリクスの「星条旗ウッドストックのもの、映像つき)」(これは厳密にはノイズ・ミュージックではないですが)、阿部薫高柳昌行「集団投射」、武満徹「燃えつきた地図」などを織り込みながらときにぶっ飛び(サチコ エムのサイン波)、ときに時間の経過を語り(オーネット・コールマンの聴かれ方の変遷など)、時間も空間も行きつ戻りつしながらの氏の語りは、なんというか「喜びに満ちた」といっていいほど楽しそうで、音楽以上に印象的でした。
 司会の佐渡裕氏(とアシスタントの女子アナさん)は最初のほう、まったくトンチンカンな受け答えしかしていなかったんですが(大友氏のギター演奏に対して「チューニングしているんですか?」などと失礼な質問をしていました。ちなみに氏の答えは「今日はしています」)、最後には「音のルーツを探しているような(感じ?)」というふうに、まあ最後まで理解も共感もしていなかったですが、それなりに学んだ感じではありました。
 とにかく氏の話とキャラクターがとてもユニークかつ「ノイズ・ミュージックが好きでたまらない!」感全開だったので、ひとつひとつの音楽を聴いただけではちょっと当惑してしまうかも知れない我々も、氏の(心から楽しんでいる)様子を観ているうちに、自然と未知の音楽を身近に感じていける、そんな内容でした。さかんに「日曜の朝から、地上波でこんなに(ノイズ・ミュージックを)かけられるなんて嬉しいなあ!」と話していた大友氏ですが、この喜びこそが本当に意味での「音楽に接した人間の喜び」なんだと、勝手ながら僕も嬉しくなってしまった、そんな番組でした。

解体的交感

解体的交感

 番組でも紹介されたこのアルバム。持ってます(笑)。もちろん復刻CDでですが。でも阿部薫(に限らずフリージャズ全般)は、僕にはちょっと敷居の高い音楽というのが、正直な感想です。
 追記:氏がジミの「星条旗」に関して「(アドリブのパートから)曲に戻ってくるんですけれど、僕はずっとこのまま(アドリブで)続けて欲しかった」というようなことを話しておられました。僕は逆に、あの嵐のようなアドリブから「Purple Haze」に突入する瞬間のスリルに、毎回ゾクゾクするので、この部分で図らずも僕と大友氏の「聴きどころの違い=センスの違い」を認識出来ました。同じ曲で同じように感動しても、こんなに違うんですね。本当に芸術鑑賞って奥が深いです。
 追記2:番組の中盤、氏はこんなことを話していました「人はそれまで聴いたことがないものがノイズに聴こえるんです。ビートルズだってそれまでスタンダードな音楽に慣れた人たちからすると雑音だったんです」。僕はこの言葉にある本質を指摘された気分です。そうか!という感じ。氏の明晰さに舌を巻きました。日曜の朝から、しかもクラシック番組で、しかも番組全体のムードは(大友氏のキャラクターゆえに)とても明るいものだったのに、こんなに簡潔に本質を突くなんて。つくづく大友氏はすごいです。