コンサート評 ボストン 10月9日日本武道館

 ボストン、35年ぶりという日本公演、武道館に行って参りました。僕はもちろん初体験ですが、35年前のコンサートは実際に行ったという友人がおりまして、その人の話では「本当に素晴らしかった」とのことでしたので、35年後とはいえ、どんなものだろうと、ワクワクしながらの鑑賞でした。
 感想ですが、もちろん良かったです。選曲はベストで、ファンが望むすべてがあったと言っていいものでしたしアメリカン・アイドルのファイナリストという女の子は存在意義がもうひとつわかりませんでしたが、バンドの演奏も素晴らしかったです。アドリブも交えつつ、あの「ボストン」をステージで再現していました。音楽会としてはそういう感想です。
 で、音楽以上に僕がものすごく印象に残ったのは、そのたたずまいというか、ムード、見た目でした。
 端的にいうと、僕の想像よりずっとカジュアルな部分が多いものでした。僕はもっとずっと「洗練されて人間臭くない」ものを想像していたんですが、意外なことに実に「ごく普通のバンド」然としていました。トムを含めて(トム以外は、ではなくて彼も含めてです)メンバー全員そんなに人目を惹くような感じではなく、ボーカルの人(ふくよかなデイヴ・グロールみたいな感じ、歌は上手かったです)の見た目やステージ上の立ち居振る舞いももっさりしているし、ギタリストが3人並んでヘッドバンギングしながら弾くシーンなどもどこか、うーん、カッコよくない(笑)。
 ステージ後方の巨大スクリーンの映像も、基本的にはずうっと同じセンスのものばかりだったし(空やら峡谷やら平原やら海やらを疾走する体の映像)。はからずもボストンのもつ「アメリカのバンド」らしい、いい意味でも悪い意味でも「垢抜けない」感じが、ものすごく印象に残りました。僕の「ボストン観」とは違う、バンドの素の顔とでもいうのかな?それともこれはたまたまなのかしら?
 バンドの演奏は素晴らしかったと書きましたが、メンバー個人個人にものすごい個性を感じたとかいうのともちょっと違うものでした。ちゃんとしている、というレベル。で、そのなかにあってトム・ショルツ1人が、やはり図抜けて光っていました。ギターはもちろんですが、数曲で弾いたキーボードもとんでもなく上手でした。僕が忘れられないのは「Peace Of Mind」他数曲で一瞬披露したアコギのカッティングです。短いフィーチャーだったんですが。目が覚めるようなクリアで才覚溢れる音色と演奏。これはすごかった。この一瞬だけでもトムが非凡なミュージシャンだということがわかるようなものでした。
 ボストンはトムのワンマンバンドで、それはレコードやCDを聴いてもそう思っていたし、コンサートを体験した現在も変わらない受け止め方です。それはあの「時代も業界の常識も超越した音楽」から強く感じられるもので、そういう意味では僕の予想どおりのものでした。そのなかで、あのなんともいえないバンドの「人間臭さ」そしてトムの「才の非凡」は、生の舞台を体験しないとわからない、不思議な「ギフト」だったと感じています。

ライフ、ラヴ&ホープ

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