13年前の11月30日

 2001年の11月30日。僕と妻は横浜のパシフィコ横浜国立大ホールにいました。Act Against AIDS2001で桑田佳祐さんがやるコンサートを観るためです。この年の企画は「桑田佳祐Plays ”The Beatles”」で、ビートルズの歴史を辿るというものでした。コンサート自体は素晴らしい内容で、密かに「ソフト化しないかなあ」と、今でも思っているものでしたが、このコンサート中、数曲が終わったところで桑田さんの口から聴きました。「ジョージ・ハリスンが亡くなりました」と。日本時間では30日だったんですね。桑田さんから知らされたということが印象的で、忘れられない思い出です。
 ジョージが亡くなって13年。早いものです。音楽を聴く環境も当時から大きく変わりました。でもジョージの音楽はいつも僕の隣にありました。iTSでのビートルズ配信開始のときは「Here Comes The Sun」が配信チャート1位になったこともありました。ジョンやポールに比べて地味(?)とも思える彼の音楽は、むしろ時の経過とともに、相応しい評価を得ている気がします。とりわけダークホース時代のものは。
 今僕は「Thirty Three & 1/3」を聴いています。1976年のアルバム。このアルバムはダークホース移籍にまつわる訴訟があり、ライナーノーツで福田一郎氏もかなりの字数を割いてそのことを解説しています(僕がこのアルバムを入手したのは発表直後ではなくたぶんその数年後でしたので、入手のときにはもう旧聞というものでしたが)。僕がこのアルバムに関する情報でリアルタイムで接したというと、シングルカットが「This Song」だということでした。友人がシングルを持っていたので聴かせてもらったのが、もしかしたら初めて聴くジョージのソロ曲だったかも知れません。ポップでいい曲だなあと思ったものです。その当時、例の盗作騒動自体は知っていましたが、この曲がそれを題材にしたものだということは知らず、歌詞を読んでも察したりできませんでした(知ったのはずっと後です)。
 曲の印象は今でも変わりません。あくまでポップスとして素敵な曲だと思います。なんですがその後何種類か出たジョージのベストもののアルバムに、「This Song」は一度も収録されたことがありません。きっとジョージとしては触れてほしくない過去なのかも知れません。その気持はわかります。わかるけれど、でももったいない。いい曲だし、あの問題を持ちださなくても「この歌は他のなににも関係ない。ただ君と僕の歌なんだよ」という歌詞はちゃんと独立した意味と魅力を持っています。
 いつかまたジョージのベストものが出るかも知れません。以前僕もそんなテーマで文章を書きました(こちらです)。そのときにはぜひこの曲にも居場所を作ってほしいなあ。ジョージ・ハリスンという「ダークホース」の、まさにダークホース的名曲。いつかきっと。その日が来るまで僕は、「Thirty Three & 1/3」のなかでこの曲を訪ねることでしょう。

Thirty Three & 1/3

Thirty Three & 1/3

 ちなみに僕、このアルバムのジャケット、ジョージの全作品中一番好きなデザインです。かっこいいよね、これ。