shirop的2014年ベスト10(洋楽編)

 メリークリスマス!というわけで今年も押し詰まってまいりましたね。今年も(主に売上げ方面で)明るくないニュースが多かった音楽界(洋楽界)でしたが、売上はともかく音楽自体はいいものが多かったです。現役アーチストもベテランも力の入った作品を出してくれました。そういうものも話題にしたい。というわけで、このブログではあまりやったことがありませんでしたが、「shirop的2014年ベストアルバム(洋楽編)」をやってみたいと思います。なにぶん個人で、しかも趣味の範囲内で購入し愛聴しているものなので至らないチャートですが、お付き合い下さい。
 で、いきなり次点11位、スカイ・フェレイラ「Night Time, My Time」すみません、どうしても上位10枚に絞る過程で落ちてしまいました。話題先行というか、メディアミックス主人公みたいなデビューでしたし、アルバムはジャケやら例の曲名やらがゴシップ的に報道されたりで、本人はどう思っているのかしら?でもアルバム自体はちゃんとしていました。サマソニで観たステージも真剣な内容で交換が持てるものでしたし。あらゆる意味で発展途上ですが、期待しています。
 第10位、ニコール・アトキンス「Slow Phaser」なんでなんで、こんな素敵なアーチストが無視されっぱなしなの?前作も素晴らしかったけれど(ジャケットも素敵だったよね)今作もしっかり成長した姿を見せてくれます。こういう人を見過ごすシーンってなんだろうね?セシリア・ノービーとかネリー・マッカイとか、女声アーチストに関しては僕と世間は大きくズレる(涙)。でもとってもいいんですよニコール。意地になって、いやいや順当に、ベスト10入りです。
 第9位、ボーイ・ジョージ「This Is What I Do」意外な伏兵(ファンのみなさん失礼!)。彼が今、こんなに真摯な作品を作り上げるとは思いませんでした。ジャケットも含めて赤裸々な、これこそ表現者の粋といえます。音作りも、(ずいぶん変わっちゃったけれど)歌声も魅力的。ヨーコ・オノの切々とした「Death Of Samantha」は、僕にとっては今年一番のカヴァーです。
 第8位、レイ・ラモンターニュ「Supernova」この人もあんまり注目されない。聴けば絶対日本でもそれなりの支持を集めような質の高さだと思うんだけれどなあ。バンド名義だった数年前の「God Willin' & The Creek Don't Rise」とは違い、ソロ名義は作を追うごとに現代的(?)になるけれど、それだって想定内。今作もブラック・キーズのダン・オーバックがプロデュースしたことがいい方向に作用しています。内生的な歌詞、抑制の効いた(フォーク的)アレンジ、魅力あるハスキーボイス。こういう、継続的にいい仕事をしている人にもっと光を!という意味も込めて第8位。
 第7位、フライング・ロータス「You Are Dead」これは僕が聴いた中で、今年一番ぶっ飛んだものでした。ロバート・グラスパーの諸作品がどれほど多彩なアレンジを施しても根っこは「ジャズだなあ」とわかるのに対して、フライング・ロータスはもう、ルーツがなにかを問うのも無意味なほど、時間空間発想すべてが自由です。こうした作品が出て、それが注目されるという状況は、僕にはとても好ましいです。
 第6位、ファレル・ウィリアムス「G I R L」これはフライング・ロータスとは180度違って、あくまで現行のポピュラーのフォーマットでの「いい仕事」。でも聴いていると本当に「HAPPY」になってきます。テイラー・スウィフトと並んで「大好きなメジャーもの」です。
 第5位、ウィルコ・ジョンソン&ロジャー・ダルトリー「Going Back Home」ウィルコの遺作になるはずだった、そう、ならなかった!秀作。ああ、なんて嬉しいんだろう。このブログでレビューを書いた時は冷静ふうに書いていましたが、正直感慨はありました。おまけに大好きなロジャーが共演しているとあってはなおさら。でも今はもう、気持よく作品に向きあえますね。改めて、ロジャーの充実に目を見張るアルバムです。年明けにはデラックス・エディションも出るとのこと。最高です。
 第4位、ブラック・キーズ「Turn Blue」こう来るとは思わなかった。もっと捻ったルーツ感覚が彼らのバンドとしての持ち味かと思ったら、このアルバムはある意味「禁じ手」といっていいほどオールドスクール的ロック。ストライプス以上かも。でもそれが不思議と懐古趣味に聴こえない。バンドがきっちり自分達が現代に生きる存在だということを確信しているからでしょう。個人的に今年最も聴いた1枚です。
 第3位、フー・ファイターズ「Sonic Highways」出るべくして出た傑作。キラーチューン的ナンバーに乏しいとか言われていますがそんなことないよね。じっくり考えをまとめたという感じの楽曲とアレンジと演奏。これこそキャリア二度目のピークを予感させるものです。僕はまだあの、録音した都市で撮影したという映像作品を観ていないので、それを観て情報を整理したあとどんな感想になるのか、それも(自分のことなのに変な表現ですが)楽しみです。
 第2位、テイラー・スウィフト「1989」こう来たか!まさに王道。まさに「今一番売れている人」が作るべき問題作。いや、楽しく明るく、この人らしい(ちょっと強引な)率直さは健在で、音は実に見事に大衆的。カントリー出身の人がメジャー展開すると、変にアダルト(というか玄人)受け方向にブレることが多いのに。この冒険心は若さの特権かしら(笑)。でも僕は支持します。大衆音楽はこうでなくっちゃ!最後まで第1位を争った大ヒット作。
 第1位、コールドプレイ「Ghost Stories」これが僕のトップ。「1989」ももちろん良かっです。彼女の率直さ、前向きさは大きな魅力です。でも僕には、「Ghost Stories」の逡巡や祈りが、より美しく映ります。僕はこのバンドはもっとドライな感覚で活動していると思っていたので、このアルバムは意外でありましたが、すぐに心を掴まれてしまいました。「A Sky Full Of Stars」の美しさだけでも、身震いするよう、文句なし、第1位です。
 どうでしょう?エディ・リーダー、ジョン・バトラーなどの新譜もよかったですし、ポール・マッカートニーの「NEW」来日記念盤も強引に入れちゃおうかなと思ったんですが、結果的に順当に「新譜のみ」で選べました。最初に書きましたが、世界的に音楽コンテンツの売上が落ち込んでいて、それは長期的な傾向でもありますが、それでも個々の音楽家は素晴らしい音楽をクリエイトしてくれています。僕は業界全体を憂えるだけではなく、1人の音楽ファンとして、楽しく質の高い音楽には喝采を送りたい、いつでもその準備ができているようでいたい、そう思っています。来年の今頃も、こうして「素晴らしいニューアルバム、素晴らしい新人」に囲まれていたいです。

追記:今年は気に入ったアルバムをアナログで買うことが多かったです。今のアナログって割高だしどこででも買えるわけではないので不便は不便ですが、収録内容の配信コードとかフルサイズのCD入りとかいろいろ配慮してくれていて嬉しいです。写真はベスト10アルバムの集合写真。ボーイ・ジョージのアナログは未入手なので、次点のスカイ・フェレイラの「眼福米盤」を入れています(笑)。