kindleで読む萩尾望都の傑作

 今日は最近ハマったものことを。
 ちょっと前にあるネット掲示板萩尾望都の「ポーの一族」の話題がありました。何人もの人がその感動を語っていました。僕も多感な(笑)高校生のころ読んで感動した「ポーの一族」久しぶりに読みたくなって、持っている文庫本を探してみたんですが、例によって本の山奥深く隠れていて見つからない。そこでちょっとアマゾンを検索してみました。実を言うと最近ちょっと(もともと非常に悪い)視力がナニでして(笑)、手元が見にくくなっており、コミック文庫サイズはだんだん辛くなってきているので、これを機会に愛蔵版でもあったら購入しようかな、と思って。
 そうしたら、愛蔵版は見つからなかったんですが、あったのです、kindle版が。これだ、これなら拡大して文字も読めるし暗いところでも読める。なんか思いっきり老人力全開ですが、気取ってもしょうがない、iPad miniも持っていることだしと思って、試しに第1巻を購入しました。
 結果、のめり込んで読んでいます、「ポー」。じっくり読み返したのはもしかしたら10年ぶり、いやもっと久しぶりかも知れないんですが、今でも読むと新たな発見と感動があります。さすが萩尾望都。ちなみに第1巻には「ポーの一族」「ポーの村」「グレン・スミスの日記」「すきとおった銀の髪」が収録されていました。なにげにメリーベルの登場頻度が高いのが個人的に嬉しい(笑)。
 そして、「ポー」の第1巻のほかもう1冊、「トーマの心臓」も購入しました。こちらはある意味で「ポー」以上に感動し、愛読した作品。これは今もコミック単行本を持っているほど好きな作品ですが、単行本では(「トーマ」以外の短編も収録して)全3巻だったものが、「トーマ」のみの完全収録版。これも「ポー」以上にのめり込んで読んでいます。「トーマ」を始めて読んだのは(「ポー」と同じく)高校1年のとき。部活の先輩から単行本をお借りして一読したときの衝撃は忘れられません。読書が好きだったとはいっても大して読んでもおらず、井の中の蛙だった僕にとって、少女コミックにこれほどの作品があるなんて信じられないほどでした。
 ずいぶん読んだのでけっこう詳細を記憶していた「トーマ」ですが、改めて琴線に触れたところを。物語の中盤でユーリとエーリクがユーリの実家に泊まる場面。折り合いのよくないユーリの祖母が、亡きユーリの父のことを「あのアラブ人」と呼び、父親似のユーリを誹るのを立ち聞きしたエーリクが「ここきみんち?ここきみの家族!?」「あれ、ほんとにきみのおばあさん!?」と驚き憤慨します。初めて読んだ時も印象的だったところですが、自分が親となり、家族というものを10代のころよりも深く考え、体験してきた身としては、あのとき感じたよりも切なく迫ってきます。あまり長くないこの場面で、ユーリの境遇を説明し、彼とエーリクが家族に対して持っている認識の大きな差を見事に描いているというのもよくわかります。さすがモー様。
 高校生になって、社会のこと、宗教などに興味を持ち始めた頃でもありましたので、本当に「こんな世界があるのか!」と思いつつ、何回も何回も読み返しました。その傑作を、今50歳を越えて、デジタルデバイスでいつでも読めるようになるなんて、夢のようです。Kindle版をiPadに入れているので、本当にじっくり見たい・読みたいところは拡大して、行きつ戻りつ読んでいます。
 「ポーの一族kindle版は全5巻(紙のコミック単行本と同じだね)で1巻400円ちょっとですので、大人買いしようと思えばチョチョイのチョイなんですが(そしていつもの僕ならそうしてしまうんですが)、今は第1巻だけを読んでいます。ゆっくり腰を落ち着けて、1「冊」づつ楽しみ、感動しながら、ラストまで進んでいきたいと思っています。この傑作に相応の敬意と愛情をこめて。