祝、「シャキーン・ザ・ライヴ」再放送!

 シャキーン!・ザ・ライヴ再放送!やったー!
 突然すみません、嬉しくて。
 NHK教育が侮りがたいということは、もうみなさんご存知だと思います。大ブレイクした「ピタゴラスイッチ」をはじめ数々の名作番組を、特に宣伝することもなく(笑)放送し続けているNHK教育。子どもがいるので観る機会が多く、「へえ、こんな番組やってるんだ」と思いながら親も一緒に見入ってしまうことが多いです。数年前に観た「やさいのようせい」(最初のシーズン)など、その後DVDを買うほど惚れ込みました(キャラクター造形はあの天野喜孝原田知世さんがナレーション担当)。で、今日話題にしたいのは現在午前7時から放送中の「シャキーン!」。
 子ども番組らしく、複数の小コーナーからなるこのプログラムですが、その内容がなかなかユニーク。全国の子ども達が身体を使ってポーズを展開しつつ次へ引き継いでいく「ひらめきリレー」などのコーナーもありますが、この番組をユニークにしているのはその着想です。突然電話がなり、あやめちゃん(番組のメインパーソナリティ)がとると相手はあぶらあげ。「油で揚げたものは他にもたくさんあるのになんで自分だけこう呼ばれるのか」などと愚痴りだし、視聴者に「新しい名前を考えてくれ」などと呼びかけてみたり、あるコーナーでジュモクさんがネコッパチにいきなり無茶振りして、狼狽しつつなんとか答えを出そうとする様をそのままオンエアしたり(ジュモクさん、ネコッパチはどちらも番組のキャラクター。ジュモクさんのキャラクター設定と声はラーメンズ片桐仁)。帯番組なのに毎回オープニングがちょっとずつ違うというのも凝った構成です。コーナーの内容は基本的に言葉や絵を使ったパズルなどですが、どれも不思議なヒネリがあります。なかなか言葉で説明するのが難しいので実際に観ていただくのが一番かと思いますが、「ピタゴラスイッチ」が基本的に理系のセンスで作られた番組なのに対し、「シャキーン!」は文系、それもずいぶんとポップカルチャー方面のセンスで作られているように思えます。
 で、この番組で僕が非常に気に入っていること、そしてNHKの他の番組と比較しても「これはすごい」と思うのは、番組で流れる歌なのです。この番組のために作られたオリジナル曲なんですが、これがどれもものすごい出来。「る」で終わる動詞だけで歌詞が構成された(ちょっと不気味な)「るるるの歌」、藤村の詩にメロディをつけた「知るや君」(「原詩」「現代語訳」の2バージョンあり。原詩ももちろんいいですが、その気品を無くさずに子どもでもわかるような言葉に置き換えた現代語訳バージョンも素晴らしい)、もろにソウルフルな「いっしょにいるから」(同伴者をテーマにした詩も深い)ムッシュかまやつ老師が3分間で宇宙の始原から現在までを歌い尽くす「うた時計」(オチ(?)もお見事)、あやめちゃんの歌唱力にビックリの「クラッパラ!」など、すごいものばかり。
 ロックファンのみなさんいぜひ観ていただきたいのが「かんじてごらん」の2つのバージョン。「1」は小学校1年生で、「2」は2年生で学ぶ漢字をすべて網羅して歌詞を作っているのですが、曲がもろにサイケデリック、そして画面で展開されるアニメーションももろにそれ。聴いているとリボルバーのころのビートルズとか「Sell Out」のころのザ・フーとかモンタレーとかフラワーパワーとかデッドとか、そんなものをたくさん思い出せます。よくこんなものを子ども番組でやろうと思ったものだよ(笑)。
 そして、この4月にオンエアされていた「シャキーンズのテーマ」がもうビートルズファンとしては感涙ものでした。まずイントロがもろに「A Hard Day’s Night」曲調も演奏もとてもビートルズ的(サビのギターは明らかにクィーンですが)。コンセプトは勉強やスポーツが不得意で自分に自信が持てない子どもに向かって「まだ君の知らない世界が、楽しいことがたくさんあるんだよ」と呼びかけるような、どこか「Hey Jude」を思わせる内容です。オンエアされたときは当然映像があったんですが、最後のところで主人公の男の子とすれ違う大学生風の青年(昔風の学生服を着ている)が小脇に抱えているLPジャケットが、思いっきり「With The Beatles」のパロディになっていました。
 この曲を演奏している「シャキーンズ」が、これまた秀逸。バンドメンバーは例えば黒電話やそろばん、鳩時計など、時代が変わって見捨てられた「道具」たちで、彼らが妖精になって演奏するというコンセプトです。実は「シャキーン!」という番組全体の裏テーマがその「捨てられたもの、顧みられなくなったものたちのパラダイス」というもので、この「バンド」もそうしたテーマに沿ったものになっています。子ども番組でビートルズというと「ポンキッキ」が有名ですが、自作の曲でこれだけのものを実現したNHKはすごいと思います。
 で、実はこの番組のライヴがあったらしく、3月くらいに突然レギュラー時間帯で2回ほどオンエアされたのです。突然というくらいですから録画もなにも出来ずに(しかも平日朝だから落ち着かないなかで)慌ただしく視聴したんですが、本当に楽しくていい内容だったのです。もちろんシャキーンズも出ていました(というか、そのときが初登場だったはず)。ベースはヘフナーだしギターはナチュラルのカジノだし、曲によってはチェロやメロトロンが入るなど、これはもうある種の大人にしかわからないような記号をちりばめつつ進行する様は、出勤前の時間帯だったのに非常に印象的でした。その後「シャキーン!・ザ・ナイト」(夜やっていた再構成版)でまた少しオンエアしたのですが、どれも断片的で不満が残るばかりでした。演奏もいいし(基本的に生演奏)曲もいい(サキタハジメ氏や小山哲朗氏がメインのコンポーサー)、もっとちゃんと放送してほしいと思っていたところ、ついに再放送決定!しかも今度は未発表部分も含めての「完全版」!やったー!と、そういうわけです(笑)。
 どの曲もとてもいいので大人でも楽しめるものですし、上述のようにロックファンなら思わず頬がゆるむような瞬間も多いです。ちょうどオンエアは祝日ですので、できればたくさんの人に観ていただきたいです。ヘタな音楽バラエティ番組の100倍も素晴らしい内容、子どもだけに見せておくのはもったいない。午前10時からということで、寝坊さえしなければ無理のない時間帯、興味のある方はぜひぜひご覧になってみてください。特にビートルズファンのみなさん、観て損はないですよ。ちなみに僕は、今まで2枚出ているCD(オンエア時の映像の入ったDVDつき)まで持っているほど入れ込んでいます(笑)。というわけで、どうぞよろしく。

これは画像がなくて歌だけですが、

公式CDはこちら。「シャキーンズのテーマ」や「イーブン・イーブン」が収録されるであろう3枚目も待ち遠しいね。

シャキーン!スペシャルアルバム~クラッパラ!/かんじてごらん(DVD付)

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シャキーン!スペシャルアルバム~みずのたび/るるるの歌 (DVD付)

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