キング・クリムゾンのベスト、一体何枚目だ?

 キング・クリムゾンのベストがまた出ていました(買ってませんが)。このグループのコンピレーションは今まで数多く出ていて、そして恐ろしいことに、決定版的なものがほとんどないという状態でしたが、今回はめずらしく凝った趣向がなく、普通の意味でのオールタイム・ベストになっています。以前出た4枚組も4枚目はライヴ集でしたから、このような形式での編集は、1976年に出た「Young Person's Guide To King Crimson」以来(30年ぶり!)ということになります。
 ご存知の方も多いでしょうけれど、クリムゾンのベスト盤というのは、リーダーのロバート・フリップの選曲がものすごく偏向していて、グループの長い歴史の一部分だけを取り上げたものが多く、初心者や「とりあえず代表曲をまとめて聴きたい」という人にはまったく不向きなものばかりでした。1枚目の「宮殿」と80年代に入ってからの「Discipline」期のものが多く収録されて、その他の時期はほんとうに冷遇されていました。3枚目「Lizard」なんて今までほとんど選曲されたことがありません。クリムゾンは駄作や捨て曲が少なく、どれも聴く価値のある作品ばかりです。なのにいつも同じようなセンスの編集盤ばかり。ファンはしかなたくオリジナル全部集めた後も「Young Person's〜」を手放せないでいました(これは、70年代の作品からの選曲で、未発表バージョン1曲、シングルB面曲1曲収録の親切盤でした。でもやっぱり「Lizard」からは選曲されてない)。
 今回のベストは「濃縮キング・クリムゾン」(原題は「The Condensed 21st Century Guide to King Crimson: 1969-2003」)というだけあって、選曲はキャリアのすべてをカヴァーしていて、CD2枚組というボリュームもベスト盤としては(とりあえず)十分です。ところが!やっぱり選曲が「?」なんですよ、少なくとも僕にとっては。ロック史にその名を遺す大傑作「クリムゾン・キングの宮殿」から多く収録されているのは当然としても、70年代のその他の時期に関しては不満が残る選曲です。特に代表的な何曲かで編集(短縮化)が行われているとのクレジットで、それはないでしょう。買っていないのでこれ以上のことは言えませんが、アマゾン等のレビューを読む限り否定的に捉える人が多いようです。
 80年代期については、現役だったころよりも現在の方が正当な評価がなされていて、その意味では収録曲数に文句はないです(僕はこの時期のクリムゾン、けっこう好きです)が、それにしても「Neal And Jack And Me」はないし、どうもお尻がむずむずしてしまいます。そして、しつこいようですが今回も、「Lizard」からは1曲も収録されてません。クリムゾンファンの間でも評価が低く、特にボーカルのゴードン・ハスケルへの風当たりは強い作品ですが、そんなに冷たくしなくたっていいのにねえ。僕は「Lizard」全体を貫く、絢爛な音作りなのにどこか「血の匂い」とでもいうような鋭い音楽が嫌いではありませんん、というか、これがだめなら「Poseidon」だって「Island」だってだめでしょ?という感じ。そうじゃないかなあ?
 しかし一方、「じゃあ自分で選曲してみろよ」と言われてしまうとはたと困ってしまうのも、クリムゾンの切ないところです。活動期間が(何回か長いインターバルがあるとはいえ)非常に長期に渡っていることと、その間何回か大きく音楽性を変えたことなどもあり、質的にも量的にも、普通のベストアルバム体裁では網羅しきれないことも事実です。ふう。もしかしたらフリップ老師は、いくつも不思議な選曲のベストを出すことで、逆説的に「クリムゾンに捨て曲なし」ということを証明しようとしているのかも(笑)?
 しかし、ここまで書いて「おしまい」では芸がない。次回は、僕独自の選曲で「ベスト・オブ・キング・クリムゾン」を選曲してみたいと思います。いや、別に「おれがスタンダードだぜ!」とか言いたいんじゃないんですが、ちょっとやってみようかな?と。というわけで、次はそれ書きます。早ければ明日。乞うご期待、というか、結果を見て怒らないって約束してくださいね(笑)。それではおやすみなさい。。。

濃縮キング・クリムゾン(初回限定盤)

濃縮キング・クリムゾン(初回限定盤)