小ネタ またもや出たクリムゾン記念盤に複雑な心境
なんだかんだいって毎年出ているキング・クリムゾン関連コンテンツ。はっきりいって全部はフォローしきれません。本当に多いし、過去のライヴ音源やベスト盤、そしていろいろ変わったという触れ込みの再発盤(みんな限定だったりするんですよね)もあって、おこづかいに限度があるオジサンにはなかなか辛いです。「Earthboud」と同時期のライヴ(「21世紀」のアドリブパートばかり繋げたというテイクが収録されていたもの)も出たことがあって、これはよかったなあと思って今調べてみたら、もう何年も前に出たものでした。彼らは現役バンドなので、新譜も出ていて、「Level Five」や「The Power To Believe」なども持っていますが(どちらも単体で聴いてもちゃんと評価できる作品です)、ものすごい数出る「旧譜群」「過去音源」に紛れてしまって、どうにも焦点が絞りきれないでいます。
そして昨年末には、ついに「40周年」記念で「宮殿」「Lizard」「Red」が出ました。40周年は「宮殿」だけじゃんと思ってしまい、しかももう「宮殿」は5枚も持っているのでとりあえずスルーして、今のところ「Lizard」だけの購入に止まっています。ちなみに全クリムゾン作品中もっとも低い評価の「Lizard」ですが、実はそんなに悪い作品じゃありません。ゴードン・ハスケルのボーカルはちょっとナニですが、それ以外は(曲も含めて)いいものです。
で、2枚組の方はなんとかスルーできた「宮殿」ですが、なんだかすごいセットが年末に出ていました。なんと6枚組。未発表テイクやライヴ音源、ファーストプレスの板起こし(!)など盛りだくさん、それがLPサイズのボックスに入っているそうです(まだ現物見ていない)。
なんだかすごいと素直に思うし、欲しくないかと言われればそりゃファンだから欲しい。でもなあ、という思いがあるのも事実なんです。こうなってしまうともう「名盤を聴く」というよりも「アーチストの関連グッズを集める」という感じになってしまって、音楽を聴く体験としてはちょっと違うのではないかと、そう感じでしまうんです。初回盤(いわゆるピンク・アイランド)の板起こしなんてその最たるものです。
もちろん音質が良くなるのはけっこうですし、めったに聴けない貴重な音源が入手できるのもいいですが、うーん。
以前、「宮殿」のオリジナルマスター・エディションが出たときにも書きましたが、こうやって音質をハイエンド化していって、加算的に音楽体験が向上するのかといえば、必ずしもそうではないのでは、と僕は思うのです。ある程度ちゃんとした音質であれば、音楽の価値はちゃんと伝わる。そうした音源がそこそこの価格でいつも入手できる、そういう環境の方が音楽ファンの裾野を広げ、よりよい聴き手を育てるのではないかと思うのです。
もちろん「熱心なファン向け」のコンテンツを否定するわけではないですよ(僕は間違いなく「そっち」の人間だし)。でもやっぱり、クリムゾンのような優れたバンドは、「クリムゾンキングの宮殿」のような傑作は、若いファンの子にこそ親しんで欲しいし、そのときに「この作品の『究極の体験』はアナログ初回だ」「最新リマスターじゃなきゃ」なんて言って、敷居を高くしてしまっては、結局「マニアしか聴かない・聴けない」ことになってしまうような気がします。それはものすごい損失でしょう。
話題にした6枚組、LPサイズのあの「顔」はインパクトすごそうで、実際に手に取ってみたらきっと僕にとっては魅力的だと思います。買っちゃうかもしれないです(苦笑)。でもやっぱり、こういう名盤はまず「誰にでも手にとってもらえる」ところにあってほしいです
In the Court of the Crimson King
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クリムゾン・キングの宮殿 デビュー40周年記念エディション完全限定盤 ボックス・セット
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