「死ね死ね団のテーマ」をご存知ですか?

 森進一が「おふくろさん」の歌詞を巡って作詞した川内康範氏とトラブルになっていますね。僕は森進一は聴きませんし、このニュース自体には「既成の曲の改変(この場合は詩の追加らしいですね)はどこまで許されるか」という部分以外に興味はないんですが、当事者の名前が川内氏ということで、そっちに驚いてしまいました。
 僕の不勉強のせいですが、「おふくろさん」の歌詞を手がけたのが川内氏だとは知りませんでした。調べてみたら、「伊勢佐木町ブルース」も川内氏でした。なぜ僕がこの人の名前を知っているかというと、この人、日本の特撮番組界で特異な地位を占めている人だからです。「特異な」というと本当はまずいかも知れません。川内氏はあの「月光仮面」(昔の、オリジナルです)の原作とか「まんが日本昔話」の監修(でしたっけ監督でしたっけ)もやっている、堂々たる業績のある人です。普通はそういうところを評価するんでしょう。
 でも僕のような人間にとっては、なによりもあの「愛の戦士 レインボーマン」の原作と一連のテーマソング作詞という偉業を成し遂げた人という方が大きいです。あのユニークな連続ドラマは、内容からいっても今地上波で再放送するのは難しいと思われますが、実に一見の価値がああります。僕はこの中のいくつかのエピソードが、当時夢でうなされるほど怖く、今でも忘れられないほど衝撃的でした。特撮レベルは決して高くなかったですが、全編を貫くオリジナリティは素晴らしかったです。
 そしてテーマソングの詩。超人になってしまった故に背負わなければいけなくなった使命におののく主人公の心情を吐き出したような「ヤマトタケシのうた」(「ヤマトタケシ」というのはレインボーマンの変身前の名前です、というか、ヤマトタケシが変身してレインボーマンになるんです。念のため)、敵役である(日本人皆殺しを目的とした秘密結社)「死ね死ね団のテーマ」の2曲は、子供心にぐっさり突き刺さるような「トラウマ度100パーセント」の名曲でした。「死ね死ね団のテーマ」はその歌詞から、現在放送媒体にのることはまれですが、一度聴いたら忘れられません。
 川内氏は(単純に分けてしまうと)右派の論客という顔も持っている人で(実際はそんな単純なものではないらしいのですが、ここで書き出すと長くなるのと、僕の不理解による誤解があるとまずいので、他意のない表現ということでご容赦ください)、日本人に向かって「死ね死ね死んじまえ」日本を「世界の地図から消しちまえ」という歌詞が当時も現在も問題にならないのは、川内氏が作詞しているからだ、という話しを聞いたことがあります(真偽は知りませんが)。
 というわけで、世間のみなさまとはちょっと違い、今回の事件では久しぶりに「レインボーマン」を思い出してしまいました。そうそう、最近は健康を害されていたという噂だった川内氏が、テレビでお元気(?)に森進一氏に向かって抗議している姿を観られて、僕としてはちょっとうれしかったというのが本音です。事件自体は円満解決が一番なんですが、これをきっかけに「まだまだ楽隠居には早い」とばかりに発奮して、また素晴らしいこども番組を作ってくださったら、中年特撮ファンとしてはうれしいです。川内先生、いつまでもお元気でいてください。