ブラックジャックに流れた「Let It Be」

 今日はのんびりとした休日で、散歩に出た以外は部屋の片付け(まだやってんです!全然はかどりません。というか、あんなにモノがあるとは!?)していました。そうすると、本が出てきて、それを読んでしまうというお約束がありますよね(笑)。今日もそんなことがありました。ちょこっとだけですが。
 その中に、何年か前に買った手塚治虫の「ブラックジャック」がありました。秋田書店のコミックスではなく、コンビニとかで売っている300円ほどのものです。収録作品にはドクター・キリコも本間丈太郎先生も琵琶丸も登場する、けっこうお得な1冊でした(ゲストキャラで百鬼丸が登場する回もありました)。
 で、その中に「音楽のある風景」という作品がありました。あらすじは次のようです。
 
 「ある国を代表する外科医が、手術のデモンストレーションのために来日、見学したブラックジャックその他の関係者の前で驚異的な技術を披露するが、その腕以上に見学者を驚かせたものが、その医師が手術中、ずっと音楽を大音量で流していることであった。デモの後そのことについて尋ねたブラックジャックに対して、その医師はこう答える『私は若い頃から音楽が好きだったが、数年前に国の法律により外国の芸術がすべて禁じられた。私の持っていたレコードも没収され全部廃棄されてしまった。その後少しずつレコードを(密かに)入手した私は、当局の目を盗んで聴くために手術室にスピーカを置き、完全防音にした。最初は気が散って手術どころではなかったが、そのうち逆に音楽なしでは手術できないほどになってしまったんだ』と。そこへその国の秘密警察がやってきて、『あなたの家から大量の禁制レコードが見つかった、反逆者として逮捕する』と告げる。抵抗して暴れているときに突然その医師は心筋梗塞の発作を起こしてしまう。主治医となったブラックジャックは、もう手遅れだと悟ると、ピノコに『手術室にポータブルプレイヤーを持ってこい』と指示し、モーツアルトの「レクイエム」をかけて手術に臨んだ、、、、」

 切ないストーリーです。浦沢直樹なら単行本2冊くらいになりそうな話しですが(笑)、手塚にかかるとわずか20ページです。なぜ今日、ここで僕がこれを紹介しているかというと、この話しの前半、日本での手術デモのときに部屋に流れるのが、なんと「Let It Be」だからなんです。ちゃんと医師のセリフの中で「ビートルズのレットイットビーの全曲を!」という台詞があり、その後の手術のシーンでも、ちゃんと手塚の描き文字で「Let It Be」の歌詞が描かれています(ただ、登場するのはその1曲のみ。手術が3分程度で終わる訳ないので、そのへんのディテールは甘いですが)。以前にも書きましたが、音楽関係の本などで登場するよりも、こういう一見関係のないところで出会うとけっこうな驚きでもあり、また、そういうところからビートルズの存在の大きさを実感もします。
 今の僕の部屋(つまり、ロフトのゴミ屋敷)は30年分の「宝物」で大変な状況です。レコードやCDは、そのほとんどが「外国産」のものです。今もし、それが全部禁じられてしまったら、、、、?とても考えられません。ビートルズはもちろん、他の「外国産」の芸術や価値観を、当たり前のように享受できる世界にいられて、本当に幸福なんだなあと思ってしまいました。今日までの僕を形づくってくれたたくさんの素晴らしい(日本か外国かなんて関係ない)芸術に、ありがとう。

Let It Be

Let It Be