全然知らなかった感動 ザ・イノセンス・ミッション

 洋楽ファン歴は30年を超え、一応他人様に「趣味は音楽を聴くことです」と話すこともでき、それなりにいろいろ聴いてきた僕ですが、それでも知らない・聴いたことがないアーチスト・音楽は(当たり前ですが)多いです。で、時々突然ものすごい発見(?)をして驚くことも。今日は最近あったそういう事例をひとつ。グループ名はイノセンス・ミッション。
 このグループ、みなさんご存知でしたか?僕が知ったのがホントに最近、というか、先週です。もしかしてものすごい恥ずかしいことかしら?本当に全く知らず、偶然耳にしたのです。いつものとおりふらりと立ち寄ったCDショップで流れていた静かな音楽。アコースティック楽器でシンプルなバック演奏に、昔のジョニ・ミッチェルをさらに繊細にしたようなボーカルが乗った音楽が僕のアンテナに引っかかってきました。聴いたことのない音楽、でも気になる。レジカウンターの「ただ今演奏中」のところにあったのが、イノセンス・ミッションの「My Room In The Trees」。
 早速買いました。そしてハマリました。ライナー読んだら、なんとこのグループ80年代から活動しているというではないですか?アメリカのインディーズで活動しているとのことで、寡作ながらアルバムも継続してリリースされていたようです。上にも書きましたが、本当にまったく知りませんでした。3年ほど前にジュディ・シルを知ったときも「なんで今まで出会わなかったんだろう?」と思いましたが、今回もそう思いました。いっつもショップうろうろしているのに、何してたんでしょうね?
 それはともかく、このグループ、とてもいいです。基本的にはアコースティック主体の静かな音楽で、俗に言えば「癒し系」になるんでしょうが、そんな形容よりもずっと奥深い音楽です。演奏も録音も、ただ楽器をならして「素朴でしょ」というようなものではなく、考え抜かれたアレンジで、ピアノの音の録り方などはローファイ的でさえあります。
 実は今日話題にしたいのは上記の「Trees」(コレが今年出た最新作)ではなく、2年ほど前に出た「Now The Day Is Over」。ジャケットはウサギのヌイグルミと一緒に眠っている子供(女の子かな)の素朴なイラスト。タイトルとジャケットからわかるように、このアルバムは一種の「子守唄集」です。収録されているのは、一部グループのオリジナルを除くと「Stay Awake」(「メリー・ポピンズ」)「Over The Rainbow」「What A Wonderful World」「Moon River」「Edelweiss」などのスタンダードや賛美歌。どの曲も3分にも満たない長さで、アレンジも殊更にデコレートしたものではなくシンプル。ただ素朴なものではなくかなり考え抜かれていますが、「磨き抜いた」というよりも「手仕事で編み上げた」とでもいうような暖かみのあるものです。そしてその演奏に乗るボーカルの美しさ。カレン・ペリスという人ですが、この人の声や歌い方が本当に演奏に合っている。あざとさや「狙った」感じとは無縁の静かさと豊かさ。聴いていると本当にホッとします。
 アルバムには2曲ギターインストが収録されていますが、2曲ともクラシック。ショパン前奏曲第7番(太田胃散のアレです)とベートーヴェンの「悲愴」第2楽章。どちらもいいです。特に「悲愴」はエレクトリック・ギターで奏でられていて、クラシックギターには出せないユニークなものになっています。
 最初に書きましたが、僕はこのグループを全然知りませんでした。どこかで噂を聞いたという記憶もありません。こういう出会いをすると自分の洋楽ファンとしての実力を思い知らされると同時に、「わかったような気になっちゃいけない。まだまだ知らない音楽があり、いい音楽は生まれ続けているんだ」と実感します。最近はCDショップに行っても「知ってるジャンルの知ってるアーチスト」ばかりチェックしていたのかも知れないです。いけないなあ。これからまた新しい棚も漁らなきゃいけないですね。イノセンス・ミッションのような素晴らしい音楽が待っているかも知れないんですから。ご存知ではなかったみなさんも機会があったらぜひ聴いてみてください。きっと感動しますよ。

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